neMu no ki 代表(店主)
飯島 千惠

 

中央大学総合政策学部卒。
民俗学や比較宗教学、文化人類学といった分野で、イスラム、東南アジア、チベットなどの諸外国でフィールドワークを経験して来た、第一線の研究者でもある異色の講師陣に囲まれての学生生活を送る。

今居る日常とは遠く異なる文化があることに目を開かされ、そうした異世界を探究したいと大学院へ進んだものの、自分の思いや考えを表現するにはその糧となる体験が圧倒的に少ないことを痛感し、休学(後に退学)して馬の世界に飛び込むことに。これもまた、乗るための馬として和種馬を専門的に育成・調教する異色の牧場へ。

その後、6年半に渡って山梨にある紅葉台木曽馬牧場で馬事にたずさわり、人に触れたことのない馬や赤ちゃんから育てて来た幼馬を人や環境にならすための馴致や、母馬と仔馬の別れ、人を乗せる仕事が出来る様に教育していく調教、種付け、出産、そして死の場面に至るまで、馬を通して数多くの豊かな体験を得る。

業務の中心であった樹海での外乗の先導で、身体を強く捻った姿勢で馬に乗り続ける内に、先導中に視界が上下に大きく揺れる現象が生じる。この体験をきっかけとして、大好きだった馬の仕事を辞して人の身体の仕組みを学び始める。

 

 

店主より皆さまへ

 

馬たちは身体感覚が鋭敏で、ボディーランゲージを巧みに使い、人の感情もよく読み取ります。

彼らとの声を使わないコミュニケーションを通して、身体の些細な動きや構えの中から馬の意図や思いを汲み取ることを学ぶ内に、私の身体の感覚も彼らのような繊細さと敏感さを持つようになって行きました。

馬のすぐ側で生き、馬と一緒に自然を感じていたこの頃の経験が、施術者としての私の感じ方や考え方を支える大切な基盤です。

(身体と歩んで来た過程については、こちらにてより詳しくご紹介しています→『身体の錬金術~neMu no ki 10年目に寄せて』)

 

馬たちが身を持って教えてくれた大切なことの一つは、彼らには彼らなりの思いや考えがちゃんとあって、無理にものを教えることは出来ないと言うことでした。

人間に出来るのは、彼らの意識がこちらに向くことを信じて、辛抱強く、そして彼らのわずかな反応をキャッチする柔軟さを持って働きかける事だけです。

馬が自分から乗り手に注意を向けた時には、馬は教わるのではなく自ら学びます。

人の身体も、実は同じです。

身体も自らの知性と判断基準を持っており、外側からの力で無理に変化させることは出来ません。

その代わりに、身体を信頼して向き合うことで、身体はどのようにサポートして欲しいのかをこちらへ示し、自ら変わり始めるのです。

 

 


(写真の馬たちは上から順に、

食いしん坊で超マイペース&肝っ玉かぁちゃんの福花、

つぶらなお目々が美しい、繊細かつちょっぴり臆病な男の子の雲竜、

小さい身体で弾むように伸びやかに動く、元気印の豊玉。

中にはもう逝ってしまった馬もいるけれど、みんな記憶の中で生き生きと輝き続けています。

日本原産の木曽馬。愛すべき、個性豊かな馬たちです。)