自然の中で、童心に返る時間。/4~5月の営業予定

 

 

 

今年の桜は、

入学式にちょうど合わせた様に

ゆっくり咲き始めました。

 

すぐに散るかな?と思いきや、

強烈な雨風に幾度も見舞われつつ

のんびり咲き続けていた気がします。

 

4月7日の時点で

こんな感じ。

 

 

 

いつになく

長い桜の時期が終わると、

今度はあっと思う暇もなく初夏!

 

春と夏って、

こんなに近接していたかなぁ?

 

 

 

窓を開けていると、

強い日差しの中で

柔らかな新緑が輝き、

 

心地よく熱を含んだ風が、

葉の間をサワサワと

通り過ぎていきます。

 

明るく朗らかで豊かな季節。

外の空気を吸うたびに、

自然の中に飛び出したくて

ウズウズして来ます。

 

 

 

気持ち良く晴れた

先々週の日曜日のこと。

 

この時期は、

夕暮れ時もまた格別

美しいんですよね。

 

母と美しい時間帯の景色を

一緒に楽しみたいなと、

散策に出かけることにしました。

 

 

 

人を結びつける自然の力

 

私の自宅の近所には

自然公園があります。

 

公園とは言っても、

丘陵の一部をそのまま

公園にしているので、

散策路はいっぱしの山道です。

 

ちょっとした沢のある個所や、

木の根に頼りながら

急勾配をのぼるところなど、

規模は小さいながらも

山歩きの楽しさを十分味わえます。

 

私にとっては、

ここでの山歩きは

自然との繋がりを体感し、

新鮮な活力を充電するための

大切な時間になっています。

 

 

意識や心を開放する時間でもあるためか、

時には面白い出会いも起こります。

 

先日は、

お花にとても詳しい方に

途中で出会い、

しばらくご一緒しました。

 

色んな花の写真を撮っては

一覧表にして配っているそうで、

自作の資料を見せてくれました。

 

聞けば、

保育園の先生をしていて、

自然に興味を持ってもらえるように

子供達に配るのだと、

楽しそうに話してくれました。

 

人生の楽しみ方を

教えてくれる存在が身近にいるのは、

子供にとって貴重なことだと思います。

 

今すぐには芽が出なくても、

心に何かは必ず

残ると思いますから。

 

 

 

その日の帰りがけ、

公園のふもとにある

竹藪を抜けると、

お寺の境内に満開の枝垂れ桜。

 

「わ~…」

 

母にもぜひ

見せてあげたいなぁ。

そう思いながら帰途につきました。

 

 

 

痛みによって強まった、身体への信頼

 

母は73歳。

昨年、ぎっくり腰になりました。

 

その通院の中で、

知らぬ間に胸椎も

圧迫骨折していたことが

判明しました。

 

当初は痛みも強く、

背中や腰を伸ばすのは

かなり大変だったようです。

 

しばらくして受けた

健康診断の際には、

身長も縮んでしまったと

ガックリ。

 

でも、定期的に施術を

受けに来ることもあって、

1年以上経過した今では

背中が次第に伸びて来ています。

 

年齢には関係なく

身体はちゃんと変わるんだと、

母も自分の身体に

信頼を感じるようになったみたいです。

 

以前に比べると、

身体と相談しながら

無理せずに楽しく過ごしている、

そんな感じに見えます。

 

その様子を見るたびに、

ギックリも圧迫骨折も

決して無駄ではなかったのだな

と思います。

 

 

 

とは言え、長い距離を

楽しく歩けるようになるまでは、

まだ少し時間が必要そうです。

 

公園までは徒歩30分。

距離があるため、

車で向かいました。

 

 

 

駐車場に車を停めると、

お寺の境内に立ち並ぶお墓に

「お邪魔します」と断りしつつ、

枝垂れ桜のもとへ。

 

すでに散り始めてはいるものの、

濃いピンクの色味が美しく、

枝ぶりにも華やぎがあります。

 

 

しばらくすると、

母は下草を観察し始めました。

 

植物好きな人間にとっては

下草だって同じように魅力的で、

桜とも優劣はなさそうです。

 

沢山のスギナが生え、

風でフサフサと

柔らかく涼しげな葉が

豊かに揺れています。

 

その合間から、

沢山のツクシも

顔を出していました。

 

「あ~、つくし!」

 

 

 

近年はツクシを見かけることが

少なくなりました。

 

どこかで見つけたら教えてねと、

春の始めに母が言っていました。

 

それが、

こんな所に生えてた!

しかも沢山!

何だか嬉しいね~。

 

 

そんなことを話しながら

お寺の階段を下ってくると、

 

「ツクシだったら、

うちの竹藪にいっぱいあるけど、

採っていく?」

 

通りかかったおばちゃんが

ふいに声を掛けてくれました。

 

あまりに思いがけない事に

母と顔を見合わせていると、

 

「すごく沢山生えてるんだよ。

どうせ刈らなきゃいけないからさ。」

 

「ツクシを摘むのはともかく、

どんなに沢山生えてるか、

見てみたい!」

 

 

 

おばちゃんが向かった先は、

公園のふもとにある竹藪でした。

 

竹藪はかなり奥行きがあるのですが、

一番手前のお寺寄りのスペースは

下草の茂る野原になっています。

 

その一面を覆いつくす勢いで、

ツクシとヨモギが生えていました。

(写真を撮り忘れましたが~。)

 

ツクシの穂が

半分開いているものを摘んで

頭をちょんと突くと、

ふわ~っと霧のようになって

胞子が飛び出しました。

 

「ほら見て!ふふふ」

 

こんな些細なことで、

思わず童心に返ります。

 

豊かな実りのある土地があるって

良いなぁ~と思っていると、

 

「ここは、どうせ

刈ってもらわなきゃいけないんだ。

お金を払って

手入れしてもらわなきゃいけないから、

こういうのがあるってのも大変なものでね。」

 

なるほど。

じゃあ、遠慮なく

摘ませてもらっちゃいます!

おばちゃん、ヨモギも欲しいなぁ。

摘ませてください!

 

 

 

ツクシとヨモギだと、

今晩は天ぷらかな~。

 

十分に摘ませてもらって、

おばちゃんにお礼を言って

別れました。

 

おばちゃん家の夜の食卓には、

きっと「甘草」が出たはずです。

 

その日の昼間、

お寺の横の土手で

甘草を摘んでいた人達がいて、

食べ方を教わったのだそうです。

 

おばちゃんはきっと、

公園に遊びにくる人達と話すのを

楽しみにしているのでしょうね。

 

 

 

時の止まった路地

 

お寺から少し歩くと、

公園のふもとに沿って

不揃いな石畳が続く

小道への入り口があります。

 

左側の土手には、

夕日に映える赤紫のヤブケマン。

右側には古い農家。

 

 

懐かしい空気の漂う

この路地に来ると、

タイムスリップした気分になります。

 

入り口が狭く分かり難いこともあり、

元気で活動的だった頃に

この近辺は何度も歩いている母でさえ

この道は初めて来たとのこと。

 

初めてなのに

懐かしい空気の場所。

 

何だかお母さん、嬉しそう。

 

美しい紅梅のある家や、

花が咲いているアケビを見ながら、

夕日に向かってゆっくり歩きます。

 

 

この路地の終端には、

レンゲの花が咲く

田んぼがあります。

その向こうは、神社。

 

お寺から始まって

神社に続く道のり。

 

この日の最終目的は、

母にこのレンゲを見てもらうことでした。

 

 

 

田んぼ~童心を蘇らせる心象風景

 

私が小さかった頃、

自宅から少し離れた所には

田んぼの残る地域がありました。

 

稲を刈った後の田んぼでは、

地力を回復する為に

レンゲ草の種を撒いたのだそうです。

 

植物の中でも、

マメ科は栄養価があります。

 

馬の仕事をしていた時も、

馬達を放牧しておくと大抵は

マメ科かイネ科の植物を

好んで食んでいたのを思い出します。

 

休耕田にレンゲ。

きっとこの風景を見たら、

母も懐かしくて

喜ぶだろうなぁと

思っていました。

 

 

 

案の定。

 

レンゲを片手に、

顔がニヤけてますよ。

お母さん!

 

 

…ね!

子供みたいな良い表情!

 

 

 

今度は、

隣の田んぼにあぜ道を発見。

 

足元は大丈夫?

滑って落ちたら水の中だよ?

 

なんていう私の心配をよそに、

スタスタと慣れた足取りで

あぜ道を歩いて行く母。

 

 

 

あれれ、

コンクリの上よりも速いみたい。

 

キョロキョロと植物を見ながら、

あっという間に行っちゃった。

楽しそうだなぁ。

 

農家育ちですもの、

こういう道の方が

実は慣れているんだよね。

 

 

 

ほら!ここ、

こんなにクレソンあるよ!

 

 

 

うふふ、良かった。

去年は痛みとの闘いで、

花見も出来なかったんだものね。

 

一年間、

思ったように動けずに

元気のない様子をしていたけれど、

 

復活したら

以前よりももっと柔軟で、

自由に日々を楽しむことを

し始めた様な気がします。

 

健康でいる自分を、

心から楽しんでいるのだろうと

思います。

 

 

 

今日、誕生日を迎えた母に、

感謝の気持ちを添えて

この記事を贈ります。

 

 

 

4~5月の営業のお知らせ

 

最後になりましたが、

まもなくやってくる

ゴールデンウィークと

5月の営業のお知らせです。

 

それにしても、

ついこの間お正月だった

みたいな気がしているのですが、

もうゴールデンウイーク!

季節は本当に足早ですね~!

 

 

 

4月中の臨時休業はありませんが、

5月は5日(金)・6日(土)が

臨時でお休みとなります。

 

定休日は毎週水・日曜日です。

 

それ以外は、祝祭日に関わりなく

営業を予定しています。

 

 

 

以前施術を受けて下さった方が、

施術の終了後、

「新車になったみたい!」

と仰っていたことがありました。

 

身体がピカピカの

新品になったような感じがした、

と言うことだったようです。

 

普段は自分のケアに

ちゃんと時間を割く余裕がない!

という方にこそ、

 

連休などの機会を使って、

オーバーホールをするつもりで

全身の調整を受けて頂けたら良いな

と思います。

 

皆さんからのご連絡を、

心よりお待ちしています!

 

 

姿勢は、心の状態を左右する ~馬の臨床②:ジャック編

 

穏やかな青空に恵まれた

年の始め。

 

この日、

暖かな陽差しの中を

ポニー達のいる「馬飼舎」へと

向かいました。

 

(くにたち馬飼舎:

http://hatakenbo.org/jackdandy

 

場所は、

neMu no ki と同じ国立市内。

歩くと30分くらいかかります。

 

周囲には田畑があり、

その間を細い用水路が流れ、

 

時期によっては、

ザリガニを探す子供たちの

声が響いていたり、

 

それを見守る

お母さんたちの姿がある、

懐かしい匂いのする場所です。

 

この日は三が日とあって、

あたりは静かな気配。

心なしか、時の流れも

ゆっくりしているようでした。

 

 

到着すると、

日当たりの良い馬場の

柵の上から、

黒い顔がひょっこりと

外を覗いていました。

 

ジャックです。

 

ジャックは、

細く柔らかな手触りをした

真っ黒い毛並みのポニー。

 

のんびりしている様子に釣られて、

挨拶をしようと

ジャックの方へ近づきました。

 

 

この日はこれから、

2頭に施術を行う予定でした。

 

施術するのはこんな人間ですよと、

認識しておいてもらおう。

 

彼らには

何度か会っていますが、

まともに触れ合うのは

初めてのこと。

 

とりわけジャックは、

いつももう1頭のポニー:

白毛のダンディの

後ろにいる印象があり、

 

直接触る機会は、これまで

あまりありませんでした。

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ジャックにしても、

私のことは恐らく

大勢の中の一人と言った程度で、

個体識別はできていないでしょう。

 

 

手のひらを軽く開いて

手の力を抜き、

ジャックの鼻の下に

そっと近づけます。

 

ジャックも

自分から鼻先を近づけると、

手の匂いを確認します。

 

これが馬同士なら、

お互いの鼻孔を近づけて、

呼気の匂いを嗅ぎ合って

相手を認知するところです。

 

 

ジャック的には、

「…ふ~ん。」

という感じ?(^▽^;)

 

受け入れてくれた

かどうかはともかく、

認識はしたみたい。

 

今度は、ジャックの

頬の辺りに触れようと、

手を少し上へ移動します。

 

その途端、ジャックは

顔を素早くそらすと、

手の甲の皮膚を軽くつまむように

歯でキュッと噛みました。

 

 

…おぉ( ゚Д゚)

そう来るか~。

 

気易く触られるのは、

嫌なのかしらん。

 

ツレないなぁ~(;・∀・)

 

 

 

ジャックが抱える、コミュニケーションの問題

 

ポニー達への施術は、

飼育員さんからの依頼でした。

 

彼らの身体のバランスを

みてもらいたい

という主旨でしたが、

 

特に施術を必要としているのは

ダンディの方とのことでした。

 

ダンディは、昨年の年末に

落ち着かない行動を見せる様になり、

 

飼育員さん達の感覚では、

それはどうも

特定の理由によるものではなく、

全体的なバランスの状態から

来ているように感じられたので、

 

整体を受けさせたいと

思ってくださったとのことでした。

 

(ダンディの施術については、以下の記事をご覧ください。

http://inemurino-ki.com/2016/02/28/therapy-for-a-riding-horse/

 

施術のメインはダンディだと

ちゃんと聞いていたはずなのに、

 

お話を受けてから

この日までずっと、

私の頭の中に浮かんでいたのは

ジャックでした。

 

それは、彼らと会った際に

こんな光景を何度か

目にしている気がして、

ジャックが気になっていた為でした。

 

 

ジャックが人間の近くにいると、

ダンディはススっと寄って来て

間に割って入ります。

 

除け者にされた感じが

するのでしょうか、

ジャックは頭を上下に振って

納得が行かない様子を示します。

 

この様子がユーモラスで、

可愛かったりもするのですが(*^.^*)

 

またある時には、

 

のんびりしているダンディに

ジャックはちょっかいを出し、

ダンディに威嚇されます。

 

ダンディは嫌がって

怒っているのですが、

ジャックはちょっかいを

繰り返します。

 

 

施術前にお話をした際、

彼らの様子については

飼育員さん達もかなり

気掛かりに思っていた事が

分かりました。

 

2頭は元々

仲が良いはずなのですが、

ジャックとダンディ、食事中.

 

ここのところどういう訳か

こうした小競り合いが

パターン化したように

なっており、

 

小屋や馬場という

安心できるはずの

日常空間の中に居ても

どちらもなかなか

寛いだ状態に

なれずにいることや、

 

ダンディがイライラしていると、

ジャックもそれに合わせる形で

緊張感が高まっていくこと、

 

ジャックはダンディの

八つ当たりのはけ口に

なっている様に思えること、

 

…などと言った

状況があることも、

分かりました。

 

 

ジャックにはもう一つ、

気になるところが

ありました。

 

それは、人間に対して

心理的にどことなく

距離があるように

思えることでした。

 

これはあくまで

私見ではありますが、

 

もし、この距離感が

ジャックの元々の性質に

適っている場合には、

「クールな馬なのね」

と思うだけだと思うのです。

 

観ているこちら側が

そこに違和感を感じて

気になると言う事は、

 

本来の状態から何かが

ズレている為ではないか

と思うのです。

 

 

ジャックの関心が

ダンディに集中していると

考えられることや、

 

ペットではなく

仕事仲間として、

 

ポニー達とは適切な距離を保ち、

風通しの良い関係性であることを

大切にしているという、

 

飼育員さん達の思慮ある姿勢を

加味して考えても、

 

10年以上もの長い間

人間と密接に関わりを

持ち続けているのに、

人間との間に何となく

隔たりがある様に見えるのは、

 

もしかしたら

ジャックが本来の性質を

何らかの理由があって

発揮しにくい状態に

いるためなのではないか、

と言う気がしていました。

 

 

 

問題を、「身体」の次元に落とし込む

 

問題行動の原因を探るという

目的のあったダンディと異なり、

 

ジャックの施術は

目的がはっきりして

いませんでしたが、

 

飼育員さん達にとっても

私にとっても気掛かりだった、

コミュニケーションや

他者との距離感といった事柄が、

その目的に関連しているのだろう

と思われました。

 

 

問題が現れたのが

行動面であれ心理面であれ、

 

それに対応する現象は

何らかの形で

物理的な身体にも生じています。

 

実例を挙げて話そうと思うと、

それだけで一つの記事になる程

長い話になってしまうので、

ここでは割愛しますが、

 

今までの施術経験を通して、

心・身体・精神は

異なる次元の機能でありながら

常に互いに同期し合っており、

 

それぞれの現れ方は違っても、

実は同じ意味内容のことが

各次元で生じていると言う事を、

身体から教わって来ました。

 

 

ジャックの場合もおそらく、

コミュニケーションや距離感という

心理面で生じている問題は、

ジャックの「身体構造」に

何らかの形跡を残しているはずです。

 

施術を通して、

それがどんな現象として

立ち現われているのかを

発見し、理解できることは

施術の醍醐味であり、

 

施術者にとってはもちろん、

施術を受けて下さる方や

施術に立ち会う方にとっても、

興味の尽きない豊かな体験を

与えてくれます。

 

 

 

信頼を得るには、信頼すること。

 

ジャックの施術を行う上で

まず問題なのは、

 

ジャックとの間に

どうやって信頼関係を築くか?

ということでした。

 

 

彼は、人との間に

心理的な距離感を

持っているように

見えるだけでなく、

 

人に触られることも

嫌がっていました。

 

これでは、

施術をすればかえって

心身の緊張感が増すだけで、

良い形で手助けをするのが

難しそうです。

 

そこで最初に行ったのは、

人間に触られる事が

心地良いと知ってもらう事でした。

 

 

 

ここで用いたのは、

ダンディの施術でもご紹介した

「キコウ」です。

 

キコウは

梁構造を持つ馬の脊柱の中で

最も高い位置にあり、

頸椎と胸椎の境目に当たります。

馬のキコウの位置

 

キコウへのマッサージは、

馬達にとっては

手の届かぬ痒い所を

掻いてもらっている感覚に

かなり近いようで、

 

馬の中には

ヨダレを垂らさんばかりの

悦楽の表情になる馬も

いる程です(^▽^;)

 

やり方は単純明快。

痒い所を掻くように

指の腹でキコウを

さするだけ。

 

さする際には、

骨格のアウトラインを

掘り起こしていくような

イメージで行うと、

より効果的です。

 

 

ジャックは最初こそ

面食らっていた様でしたが、

 

次第に気持ち良くて

我慢できない様子になり、

 

首をぐ~っと伸ばして

キコウをこちらに

差し出すようにすると、

 

鼻先をぎゅうっと尖らせ、

口をはむはむと

活発に動かし始めました。

グルーミング時に、鼻先を尖らせる馬

 

鼻先に力を入れて尖らせるのは、

自分も相手の痒い所を

掻いてあげるためです。

 

その鼻先と歯を上手に使って、

馬達はグルーミングを行います。

 

思っていたよりもずっと早く、

「僕もグルーミングやってあげるよ!」

とジャックは意思表示をしてくれました。

 

 

次に、胸の方へと

手を移動しました。

 

胸に手が触れた途端、

ジャックはくるりと

後ろを振り返ります。

 

わざわざ

目で見て確かめる

その仕草には、

 

何をされているのか

すごく気になっている、

 

もしくは、

そこを触られるのは嫌だ、

という意思が表れていました。

 

 

その気持ちを尊重して、

反射的にスッと

手を引きました。

 

手が離れたのを確認すると、

ジャックは前に向き直ります。

 

視線が逸れたので、

ふたたびそっと

手をジャックの胸に

当てがいました。

 

また嫌がったら、

同じ様に繰り返すつもりでしたが、

 

今度はジャックは

わずかに耳を動かしただけで、

後ろは振り向きませんでした。

 

ジャックの身体からは

警戒と緊張感も

消えたように感じられ、

 

人間に触られることを

受け入れたのだと、

分かりました。

 

 

「いつも、お腹なんて

嫌がって触らせないんですよ~!」

 

と、飼育員の緑川さんは

驚いた声を挙げました。

 

同じく飼育員の平島さんは、

この時のやり取りから

深い意味を感じ取ってくださったそうで、

 

馬の顔色なんか見なくても良い

と教えてくれた人がいて、

そうなのだろうと思っていました。

 

でもジャックは、

顔色を見て欲しい馬

だったんですね。

 

自分の出したサインを

ちゃんとキャッチしてくれたと

あの瞬間に感じたことで、

ジャックは飯島さん(:私です)を

信頼したのだと思いました。

 

そして、人間とも

コミュニケーションが出来るのだと、

理解した様に見えました。

 

後日、こんな風に

話してくれました。

 

 

ジャックとのやり取りは、

わずかな時間の間に起きた

ささやかなものでした。

 

それを細かく観察し、

そこから深い気付きへと

理解が繋がって行ったのは、

 

平島さん達が日頃から

ポニー達の一挙手一投足に

意味があることを感じ取り、

 

 

それを理解しようと

努力する姿勢を、

持ち続けているからこそ

だったのだろうと思います。

ジャックと平島さん

遺跡の調査員だった平島さんの観察眼は、どんな細かい差異も見逃さない、鋭さと確かさを持ちます。

 

 

ジャックが早い段階で

信頼を示してくれた理由は、

 

今になって考えると、

平島さんが言及して下さった

ジャック自身に生じた理解の他に、

3つの要素があったと思います。

 

一つは、

最初に触れたキコウが

実はジャックにとっては

鍵になる重要な部位だった点。

 

これについては、

施術の過程を記述する中で

触れます。

 

二つ目は、私自身の

馬に対する信頼、

 

三つ目は、場の設定です。

 

 

 

信頼は、心地よい「間」を生む

 

私は20代の頃、

日本固有種の馬達と

仕事も寝食も

共にしていました。

 

6年半の間、馬達と

どんな風に向き合っていたか、

それはまたの機会に

お話出来たらと思いますが、

 

その年月の中で、

私は馬達、とりわけ

和種馬やポニーなどの

目線の近い馬達に

強い親近感を持ち、

深く信頼を感じる様に

なって行きました。

 

ジャックと向き合った時、

私の中にはこうした馬達への

無条件の信頼がありました。

 

そして、それは

彼らなら必ず「理解」しようと

耳を傾けてくれる、

という信頼でした。

 

 

 

もし、人間が

馬を信頼していないと、

 

人間は自分の意図に

従わせようと焦り、

力んで力づくになります。

 

逆に、馬には

人間が言わんとすることを

理解しようとする意識と

能力があると信頼していれば、

 

馬の反応の仕方が

自分の思ったような

現れ方ではなかったとしても、

 

その馬が彼なりの応答を

能動的にしてくれるまで、

見守り、待つことが出来ます。

 

待った上で、やっぱりまだ

理解できていないと分かったなら、

 

その時は伝え方を

もっとシンプルにして、

馬の理解しやすい形に

変えて行けば良いのです。

 

 

待つことは、

やり取りにちょっとした

「間」を生み出します。

 

その「間」から、

馬は考える余裕と

判断する自由があるのを

感じ取ります。

 

人間が馬を

信頼しているかどうかも、

こうしたわずかな「間」によって

馬には伝わるものだと思います。

 

 

 

変容の場としての施術

 

三つ目の要素として挙げた

「場の設定」は、

施術を行う上で

とても重要な要素です。

 

施術は、

施術を受ける人や動物にとって

「変容」の場です。

 

変容の過程は、言わば

従来の自己がまとっていた

様々な意味での「形」を

脱ぐことですから、

無防備な状態でもあります。

 

その状態にあって

変容が滞りなく進むためには、

蝶にとっての蛹や繭のように、

守られた安全な場、

空間が必要です。

 

特にジャックのように

繊細な性質の場合には、

周囲の環境に影響を受けやすい為、

意識的に場を選ぶ必要がありました。

 

 

ジャックを繋留するのは、

飼育員さんの提案に従って、

馬場の入口にしました。

 

馬飼舎では、馬場は

馬小屋と一体になっていて、

 

馬場の奥に馬小屋があり、

馬小屋の入口は

馬場の方を向いています。

 

つまり、ポニーを

馬場の出入口につなぎ、

顔が馬場の中へ

向くようにさせると、

 

そのポニーの目には、

馬場の向こう側に

大きく戸を開いた我が家と、

 

その中でのんびりくつろぎ、

時折うつらうつら居眠りする

もう一頭のポニーの姿が

映ります。

 

目の前には、安全な小屋と

のどかな情景。

 

ポニー達の心は

安心と余裕を

感じられるはずです。

 

 

それに、

この日は三が日で、

 

馬飼舎の周辺は

落ち着いた空気に

包まれていました。

 

この場にいる人間は、

ジャックが良く知っている

飼育員さん達と、

施術者の3人だけ。

 

馬場から見える道路も

ほとんど人の気配がなく、

風も穏やか。

 

何かが視野をかすめたり

怪しい物音がしたりして、

ジャックが驚くことも

ありませんでした。

 

ジャックが安心して

リラックスできる環境、

安全を感じられる

空間であったことで、

 

ジャックの意識はおのずと

自分がされている事に集中し、

 

施術に対して受け身ではなく、

能動的に参加する姿勢に

なっていたのだと思います。

 

 

 

ジャックの本質

 

キコウのマッサージに対する

ジャックの反応は、

 

ジャックが身体的な感覚を

素直に表現する性質であり、

 

内側で感じたことを

隠しておけない、

 

よく言えば

オープンで明るく、

 

場合によっては

直情的になりやすい傾向性を

表していました。

 

 

ジャックの性質が

はっきり見えて来ると、

今までの状況も

整理し易くなります。

 

たとえば、

ダンディがイライラしている時に

一緒にイライラしていた状態は、

 

ダンディに負けまいと

我を張るような

積極的な反応とも思えますが、

 

繊細な性質のせいで

ダンディのイライラに

無自覚に心理的な侵食を受け、

 

本来は自分のものではない

そのイライラと

一体化してしまい、

 

それが無意識的に

ジャックの行動となって現れた、

と受け止めることも出来ます。

 

言うなれば、ジャックは

外部からの影響に

大きく揺さぶられ、

 

実は自分の意思とは

関わりの無い所で

行動させられていたのかも

知れません。

 

 

もしここで、ジャックの肉体や

エネルギーフィールドが

十分に安定した状態であれば、

外界にはそれほど強く

影響されずに済むはずです。

 

(安定したエネルギーフィールドは卵形で、

安定した身体の細胞は

球形であると言われています。

 

卵も球も、外からの刺激に対して

物理的かつ構造的に

強い抵抗力を発揮する形であり、

 

エネルギーや身体の安定性は、

外部からの影響の受け止め方、

すなわち外部との関わり方に

直結している事が分かります。)

 

ジャックは、どこかに

外界からの干渉を許す、

弱く感応しやすい部分を

持っている可能性が強そうです。

 

だとしたら、

それは身体のどの辺りに

潜んでいる可能性が

高いのでしょうか?

 

範囲を絞り込むために、

ジャックの日頃の体調について

平島さんにお聞きしました。

 

 

ジャックは

細くて柔らかい毛並みのせいか、

寒さが苦手です。

 

(細くて柔らかい毛の馬は

皮膚も薄めで発汗しやすく、

暑い気候に適応します。)

 

身体を温める為なのか、

寒い時期にはよく跳ねます。

 

寒い日の朝は、

朝から怒っていたりもします。

 

 

…やっぱり、

気持ちが身体に出ちゃう

タイプなんですね(^▽^;)

 

 

水はいつも沢山飲んで、

おしっこはほぼ無色のものを

沢山します。

 

ボロ(糞)は、表面がまるで

コーティングされている様に

コロコロで、形がしっかりしています。

 

 

おぉ!

なんたる快便!ヽ(^。^)ノ

 

消化器系、泌尿器系は、

共に良好に機能しているようです。

 

それならば、

これらの臓器が

納まっている腹腔も、

安定した状態にある

と考えられそうです。

 

(腹腔や胸郭などの

臓器を納めている「器」の状態は、

臓器の状態と直結しています。

 

例えば胸郭の厚みが

薄くなっているような場合は、

肺も上手く膨らみませんし、

心臓は狭苦しさを感じたりします。

 

そして、

心臓が感じている狭苦しさを、

私たちは不安や焦燥感のような

心理的な感覚として、

共有していたりもします。)

 

腹腔に問題を抱えていた

ダンディと違って、

 

ジャックは仕事の中で

子供たちを乗せる事がなく、

 

日常的に、

背中や腰にかかる荷重を

耐える必要がないため、

腹腔の安定性と健全さが

保たれやすいのかも知れません。

 

少なくとも、

弱さを抱えているのが

腹腔である可能性は、

低そうです。

 

 

 

姿勢と心のつながり

 

いよいよ、

ジャックの身体に

どんな現象が生じているかが、

明らかになって行きます。

 

 

始めに、

身体に生じている

歪みや緊張を

細かく調べて行きます。

 

お尻→背中→頭部を結ぶ

体幹の背側面を調べ、

 

次はお腹→胸へと

体幹の底面を視ました。

 

背側面では、

皮膚や筋肉、筋膜などの

ジャックの体壁を形成する組織は、

後ろから前への方向性を持って

ゆるみを生じていました。

ジャック-背側のゆるみ

 

底面(腹面)では、組織は

前から後ろへ動きます。

ジャック-腹側のゆるみ

 

体組織の各部に現れる

方向性を持った緩みは、

 

身体に生じている歪みや

姿勢の偏りの現状を、

忠実に反映しています。

 

すなわち、背側では

組織は頭の方へ向かっており、

 

これはジャックの姿勢が

前のめりになりがちなことを、

 

腹側で見られた

鼻先からお腹へ向かう

後ろ向きの方向性は、

 

鼻面をお腹に

近づけるようなイメージで

身体を丸める体勢を取っている事を、

 

それぞれ示唆しています。

 

つまりこれらは、

胸をすぼめながら

背中を丸める姿勢を示しており、

ジャック-上下両側のゆるみの方向性

 

ジャックが意図していなくても、

外から身を守ろうとするような

防衛的な構えに、身体が

自ずとなってしまっていることを

示しています。

 

 

今度は、体幹の

捻れの状態を調べます。

 

体幹の上半分(背中の方)は

全体的に左へ回転します。

ジャック-背側の捻れ

 

体幹の下半分(お腹の方)は、

胸郭部分では左への回転。

腹部は、右へ回転しています。

ジャック-腹側の捻れ

 

これらを整理すると、

 

体幹の前半分では、

胸郭の左側面に向かって

上下両方から

力が集まっている状態を

示しており、

 

体重を左の前脚だけに

負荷させている様子です。

ジャック-体幹全体の捻れ

 

他方、体幹の後ろ半分は

反時計回りにぐるりと

一回転しており、

 

後肢には体重を乗せず、

力を受け流して

いるかのような印象です。

 

 

骨盤は、

全体的に組織が

後ろの方へ向かっており、

 

頭の方へ向かっていた脊柱とは、

背骨と骨盤の境目:腰仙関節で

前後に引っ張り合っている状態です。

ジャック-背部と骨盤のゆるみの方向性

 

これは、背を丸めて

胸をすぼめる姿勢とも、

つじつまが合います

 

この姿勢を取るには、

馬の場合には骨盤を幾分か

下へ落とす必要がある為です。

 

 

最後は、

4本の肢(あし)の状態です。

 

前肢体(肩甲骨と前肢)では、

組織は下から上へ向かいます。

 

後肢も同じように、

下から上へ向かっています。

ジャック-四肢のゆるみの方向性

 

四肢のすべてが

上へ向かう力を

帯びていると言うことは、

 

ジャックの肢は

大地との接触が

希薄になっており、

 

グラウンディングしたくても

できない状態だったと

想像する事が出来ます。

 

こうした

足元の不安定さは、

不安や緊張を感じやすい

ジャックの心理状態と

合致しているように思えます。

 

 

このようにして、

身体構造の主要な部分における

組織の歪みを調べ、

 

今度はそれらを全て

比較して行くと、

 

全身の歪みの原因が

どこにあるのかを、

絞り込むことが出来ます。

 

 

ジャックの場合は、

全身の歪みの原因は

左の肘関節に特定されました。

 

より詳しく言うと、

肘関節の内側のくぼみで、

人間で言うなら

腋窩に似た構造の所です。

 

人間の腋窩は

肩関節の内側ですが、

 

四足動物の場合は

肩関節は胸郭にぺったりと

張り付いた構造になっており、

 

腋窩のような窪みがあるのは、

肘関節の内側です。

 

これを腋窩と呼べるか

分からないので、

ここでは便宜的に

肘の内側窩と呼びます。

馬の肘関節の内側窩

 

ジャックの

左肘の内側窩では、

組織があまって

たるんでいました。

 

それに伴って

左胸の幅も広がり、

左右の胸幅が

不揃いになっていました。

 

緑川さんにも、

他の部分の組織と

手触りが違うことを、

触って確認してもらいました。

ジャックと緑川さん

動物看護士でもある緑川さんは、感覚と感性の人。 体組織の感触を触り分けるのには、訓練やセンスが必要だったりします。

 

 

 

ジャックの自己防衛

 

施術の相手は

小さいポニーなため、

作業中はどうしても、

中腰になります。

 

身体の軸を安定させるために、

左手はごく軽く

キコウに乗せていました。

 

その状態のまま、

左肘の内側窩への

アプローチを開始します。

 

 

左肘の内側窩の中央には、

最も組織がゆるんでいる

一点がありました。

 

そこを指先で触った瞬間、

左手を乗せていたキコウが、

フゥッと下にさがりました。

 

そんなこと、あるの!?

と思われる方も

いるかも知れませんが、

あるんですよ~(*^^)

 

これは何が起きたかと

言いますと、

 

原因部に触れたことで、

キコウの緊張が瞬間的に解け、

構造的な変化が生じたわけです。

 

この際に触れた

最もゆるんでいた一点は、

身体からしてみれば

「待ってました!

そうなの、そこなのよ~」

と言うポイントだったのでしょう。

 

ジャックの身体は、

反応する機会をずっと

待っていたのだと思います。

 

キコウが下に降りたのに伴って、

胸郭内にもふわ~っと

寛ぎが広がって行きます。

 

これはもう本当に、

ふわ~っと言う感じが

手を通して伝わって来ました。

 

 

キコウの変化の仕方から、

今までジャックのキコウは

持ち上がり気味だったことも

分かりました。

 

キコウが緊張して

うわずっている状態は、

人間に置き換えれば

いかり肩に近いでしょうか。

 

肩を怒らせると

周囲に対して自分を

大きく見せる事ができ、

 

あるいは、自分自身が

大きくなったような感覚を

持つことが出来ます。

 

キコウの緊張は、

ジャックの防衛姿勢を支える

力の一つだったのでしょう。

 

一体ジャックは何に対して

自己防衛をする必要が

あったのでしょうか?

 

自分を除け者にすることのある

ダンディに対してでしょうか?

 

 

 

守りたかった、自尊心

 

2頭は以前、日野市の

河川敷近くの公園で

暮らしていました。

 

お隣のくにたちに

引っ越して来たのは

一昨年前のこと。

 

沢山の人達の尽力によって、

機能的で素敵な馬小屋が

農地の一角に用意されました。

 

小屋は馬場と一続きなので、

ポニー達は好きな時に

馬場に出たり小屋に戻ったり

自由に過ごせます。

 

それに、小屋の中には

ロフトがあって、

子供たちが泊まることも

出来るのです。

 

 

でも、

実際に生活して行く内に、

飼育員さん達には少し

気になる事も見えて来ました。

 

河川敷にいた時より、

全体のスペースは小振りです。

 

以前に比べると、

2頭が近くに

居すぎるのではないか、

 

そんな風に

感じる事がありました。

 

 

社会性が高いとはいっても、

馬同士の関係性は通常、

個人主義の傾向を

色濃く持っているように思えます。

 

一緒にいるけれど、

互いの領分は

ちゃんと守っている、

と言う節度ある関係です。

 

領分を守る為には、

心理学で言うところの

パーソナルスペースを、

お互いに守れるだけの

空間的な余裕も必要でしょう。

 

そう考えると、

ジャックとダンディにとっては

その余裕は不足気味なのかも

知れません。

 

互いの距離が近すぎると、

そのしわ寄せは

立場の弱い方へやって来ます。

 

ジャックが自己防衛を

せざるを得なかったのは、

ダンディとの間でストレス を

感じていたからかも知れません。

 

 

キコウの緊張が解けたことで、

ジャックのリラックスは

さらに深まりました。

 

身体の緊張がゆるみ、

体内の空間が広がると、

 

それは身体全体に

深い安堵感をもたらします。

 

今や、ジャックの目は

ウットリと眠たそうで、

なかば閉じかけています。

 

「こんなジャック、

今まで見た事がない!」

 

ふたたび、緑川さんから

驚きの声が挙がりました。

 

 

原因部の左肘内側窩へ触れると、

進むべき道順を示すように

次なるサインが現れました。

 

次のサインに触れると、

また次が現れます。

それを丁寧に

追いかけて行きます。

 

次々現れるサインの正体は

一体何なのかと言うと、

 

身体構造の中に

幾層にも重なり

隠されている緊張や歪みが、

 

どのように形成されて来たかを

示す情報であり、

 

臓器と体壁とを

一つに結び合わせている

筋膜によって

 

身体構造の奥から体表へと

伝達される情報なのだろうと、

私自身は理解しています。

 

 

次々と移動するサインを

追い掛けて行くと、

 

辿った道筋はやがて、

今まで見えていなかった

不思議な地図を、

身体の表面に描き出します。

 

ジャックの左肘内側窩から

肘関節の後ろ側へまわり込み、

 

今度は少し上へ上がって、

肩関節へ出ます。

 

肩関節の接合面に沿って

関節の後ろから前へ移動すると、

 

ふたたび上へ上がり始めます。

肩甲骨の前縁に沿って、

進んで行きます。

 

肩甲骨前縁の上端に来ると、

前方へ曲がって頚部へ。

 

頚部後方の

広い三角形になっている

部位に辿り着くと、

そこには不自然な

深い凹みがありました。

 

サインの移動は、

ここで止まりました。

 

 

しばらく待っていると、

体内で波のように

変化が広がり始めます。

 

この凹みのすぐ上には

タテガミがあり、

 

本来は上に弧を

描くはずのタテガミも、

そこでは凹んでいましたが、

 

体内で波のように

変化が広がって行くのと共に、

凹んでいたタテガミのラインも

上向きの弧へと戻り始めました。

ジャック-過程①

 

上向きの弧を描くタテガミは、

自信と尊厳をイメージさせます。

 

その回復を待っていたかのように、

サインが再び動き始めました。

 

次は、

キコウへ向かって行きます。

ジャック-過程②

 

キコウへ到着すると、

ふたたび

動きは止まりました。

 

しばらくして

今度は胸郭が上へと

持ち上がりはじめると、

 

それに伴って

胸郭内の大きな空間が

軽やかさを取り戻して行きます。

 

それは、

今まで中身が詰まり、

張りつめていた胸郭から、

密度や圧力が抜けて

軽くなって行く感触でした。

 

 

身体は

変化を十分に起こす為に

止まって時間をかける事を、

時折、必要とする様でした。

 

胸郭に変化が生じると、

今度はキコウから真っ直ぐ

下へと下り、

 

肩甲骨の中心を通って

肩関節の真ん中へ出ました。

 

そこから

関節に沿うような形で

後ろへ進むと、

 

肘関節の後端まで来て停止。

これで3度目の停止です。

ジャック-過程③

 

ここではまず、

肩甲骨に変化が現れました。

 

 

本来なら、

馬の肩甲骨と上腕骨は

胸郭に寄り添うような

構造になっています。

 

ジャックの場合は、

左肩甲骨の下部から

肩関節にかけて

胸郭から浮き上がり、

隙間が生じていました。

 

その隙間が、今は

閉じて行きつつあります。

 

まるで肩甲骨と上腕骨が

自分から胸郭に

吸い付いて行くかのような

迷いのない能動的な動きです。

 

 

肩甲骨と上腕骨が

浮いていた代わりに、

肘の後端では

胸郭に向かって

閉じた状態でしたが、

 

肩甲骨と上腕骨が

閉じて来たのに伴って、

肘の方では逆に

外へ開いて行く変化が起き、

 

肘をしっかりと

外へ張ることができる様に

形が回復して行きます。

 

 

この変化を受けて、

今度は上腕骨が

上下に伸び始めました。

 

今まで上腕骨には

上下から圧縮が加わっている様な

状態だったようで、

 

その外側からの圧縮力が

解けるにつれて、

上腕骨にはググッと

内側から力が入って行き、

 

体幹をしっかりと

支え上げる力強さを

取り戻して行きます。

 

横で観ていた平島さんも、

肩から腕にかけて

変化が生じたことに気付き、

目顔でうなずきました。

 

 

圧縮の生じていた上腕骨は、

歪みの検査の際に

ジャックが最も敏感に

嫌がったところでしたが、

 

普段からそこを触られるのを

一番嫌がっていたのは、

そういう事だったんですねと、

 

緑川さんも合点が行った様子で

教えてくれました。

 

 

 

上腕骨が圧縮されていると、

身体の重さを前肢で

効率的に支える事が出来ません。

 

そのため、

ジャックは肘を胸郭に引きつけ、

肘でロックするようにして

体幹を支え上げていたのでしょう。

 

肘が内側に寄った為に、

肩の関節は胸郭から離れ、

浮き上がった状態に

なっていたようです。

 

胸郭そのものが

下に沈みこんでいたことや、

タテガミ:首の根元が

下向きの弧を描いていたことも、

 

上腕骨の支え上げる力が

弱っていたことによって、

一緒に引き起こされていた

現象だったと分かりました。

 

首の根元と胸郭が共に

沈み込んでいた状態は、

 

ジャックにしてみれば、

首根っこをグッと下に

押さえ付けられている様な感覚として、

経験されていたのではないかと思います。

 

これは

何かに屈している姿勢であり、

 

この姿勢を持っている事で、

自尊心が傷つきやすくなることが

想像できます。

 

 

周囲が沈み込んでいる中で、

梁構造を持つ背骨の

頂点に位置していて

最も支持力の強いキコウだけが、

緊張を帯びて持ち上がっていた理由は、

 

一つには、

沈み込んだ体幹前方部を

何とか持ち上げようとして、

ジャックの身体自身が

工夫を行った為と考えられます。

 

そしてもう一つ、

キコウを高い位置に

保つことで、

 

首根っこを押さえられて

自尊心が傷つきがちだった

ジャックの気持ちも、

支えられていたのでは

ないでしょうか。

 

 

ジャックの身体は、

窮屈さの中に在りました。

 

そして、この

体内に生じている窮屈さが、

 

ダンディとの関係性を、

より窮屈なものに

感じさせていたのかも知れません。

 

 

肘の後端で停止していた動きは、

肘内側窩の中央:

始まりの地点に戻って来ました。

 

左肘の内側窩で

たるみんでいた組織は、

張りを取り戻し、

 

左だけ広かった胸の幅も、

左右が揃いました。

 

施術は終了しました。

 

ジャックと視線を合わせると、

ジャックは目を

キラキラと輝かせていました。

 

 

 

取り戻した自信

 

上の画像は施術前、

下は施術後の様子です。

ジャック 施術前

ジャック 施術後

 

施術前も、

良い姿勢を撮ろうと思って、

待っていたんですケドネ(;^ω^)

 

でも、しばらく待っても

ジャックは休めのまま。

仕方がないので、その状態をパチリ。

 

それが施術後には自然と、

ちゃんとした立ち姿を

見せてくれています。

 

 

全体の印象の違いとして、

施術後には力強さが出ているのを

見て取れるかと思います。

 

力強さは、どこから

来ているかと言うと、

 

まず、

左右の前肢のひづめが

施術後にはきっちり揃っていて、

胸郭を両肢でしっかりと

支えています。

 

そのため、

胸の前のラインもスッキリと

きれいに上に向かって

立ち上がっています。

 

 

背中のラインは、

間延びしているように

長く見えていたのが、

 

立体的でコンパクトになり、

輪郭がはっきりして

滑らかな弧に変化しています。

 

これは力強い曲線なので、

背中に掛かる重さを

しっかり支えられるでしょう。

 

また、

施術前には浮き上がり

緊張がある事を示している尾は、

施術後には根元から

すとんと閉じ、

 

後肢もどっしりと

グラウンディングしています。

 

 

前後肢がしっかりと

体重を支えられる様になり、

背中の曲線にも

力強さが戻ったことで、

 

胸、首、頭の位置もおのずと、

高く持ち上がっています。

 

そして今は自発的に、

人間の方へ視線を向けています。

 

顔を挙げた

ジャックの姿勢からは、

自信のようなものが

感じられると思いませんか?

 

 

施術が終わり、

ジャックは平島さんに誘導されて

小屋の中へと帰って行きました。

 

その時の姿はまるで

平島さんにピッタリと

付き従っている様で、

 

人間と一緒に居て

落ち着いた気持ちでいるのが

歩き方からも分かります。

 

小屋の中では

ダンディが待っていましたが、

ちょっかいを出すどころか、

ダンディを気にして

視線を送ることもありませんでした。

 

ジャックは自分の小屋の

窓際に立つと、

実に穏やかに

うっとりと目をつぶり、

 

窓から差し込む陽を

頬に受けながら、

内側の感覚をゆったりと

味わっているように見えました。

 

 

 

龍神さまの思いやり

 

今回は、20代の頃に出会った

ちょっと面白い体験のお話を。

 

 

 

もう、何年も前の事。

友人と伊勢詣りに行きました。

 

当時はまだ、

山梨の牧場に住み込みで勤務していた頃。

一番近くのコンビニだって

車で5分と言う距離でしたから、

どこへ行くにも、足はとにかく車でした。

 

今は体力的にも根気からしても無理ですが、

あの頃は3時間程度なら

一人で平気で運転しましたし、

10時間の距離だって

交替できる人がいれば楽勝でした。

 

という訳で、

10時間程度の距離の伊勢にも、

もちろん車で行きました。

 

 

倭姫宮へ

 

お伊勢さまは

離れた場所に点在する小さなお宮を

沢山抱えています。

そのどの辺りを

どんなスケジュールで回ったのか、

もう遠い出来事なので忘れましたが、

 

最後の最後に行ったのが、

ヤマトトトヒモモソヒメの祀られた

倭姫宮でした。

 

図引用:三重県明和町HP<斎王<倭姫命 http://www.town.meiwa.mie.jp/romantic/saio/saio2.html

図引用:三重県明和町HP<斎王<倭姫命http://www.town.meiwa.mie.jp/romantic/saio/saio2.html

 

 

ヤマトトトヒモモソヒメ(倭迹迹日百襲姫命。以下、倭姫)は

やたらとすごい伝承を色々持っているのですが、

簡単に要点を挙げてみますと、

 

ヤマト王権の開祖とされる崇神天皇の皇女で、

ヤマトタケルの叔母として草薙剣をタケルに与えており、

天皇家の守護である天照大御神と対立していた

大物主神と神婚をしています。

 

天照大御神が鎮座すべき場所を探す役目を任され、

伊勢の地を選定した才能ある巫女でもあります。

 

 

 

その倭姫が祀られた神社は、

高速のインターチェンジのすぐ近く。

 

せっかくだから

帰る道々に寄って行こうという話になりましたが、

立ち寄った頃にはすでに

黄昏時が迫っていました。

 

神社の入口横の駐車スペースに車を止め、

鳥居をくぐります。

 

画像参照:神宮巡々2 http://www2.jingu125.info/2014/12/14/20141214_13373420183/

画像参照:神宮巡々2 http://www2.jingu125.info/2014/12/14/20141214_13373420183/

 

 

黄昏の境内

 

原始林をそのまま保存しているせいなのか、

薄暗がりの境内は妙に鬱蒼として見えました。

 

参道には、灯篭がありません。

どこまで続くか分からない参道を

灯りもないままに歩いて行くのはちょっと…、

この時、お互いに無言ながら感じていたようです。

 

今考えると、この時

林の持つ存在感とそこに息づく気配に

気圧されていたのかも知れません。

 

「参道は長そうだし、

あんまり遅くなっちゃうと東京まで帰るの大変だから、

ここで失礼して行こうか~?」

 

「うん、途中まで来てごめんなさいだけど、

ここで失礼して帰ろう。」

 

ちょうど参道がL字型に折れ曲がる所だったので、

そこで二人並んで深々と頭を下げ、

「ここで失礼いたします。」と一言断ると、

そのまま入口の方へと踵を返しました。

 

傾きかけた太陽の弱々しい光は

林の奥までは届かず、

かえって樹々の影を深く見せていました。

 

 

後ろの気配は…

 

しばらく歩いていると、

背後にはっきりと

違和感を感じ始めました。

 

後ろに、大きな塊がいます。

私の頭よりも高い位置に居て、

後ろには5メートルほどの距離でしょうか。

 

どっしりとしたものが浮かんでいて、

一定の距離を保ちながら私たちに付いて来るのを、

はっきりとした体感として感じました。

 

参道の幅からはみ出すほどではないですが、

かなりの大きさがあります。

そして、相当に重量があるのも感じられました。

 

 

 

…なんじゃこれ?

感じてるのは私だけ?

 

右を歩いていた友人をそっと横目で見遣ると、

薄暗がりでもはっきり分かるくらいに青ざめており、

少しうつむき加減になった首が

カチンと固まっている様子が分かりました。

 

ははぁ、

同じものを感じているらしい。

 

 

 

当時働いていた牧場は

富士の樹海の一角にありました。

 

樹海で強烈な気配に出会ってヤバイと感じ

気合で追い返したという話や、

夜中に目が覚めたら目の前に巨大な目玉があった、

なんて話を日頃から聞いていた事もあったのか、

(私自身は、その手の体験は悲しい位にサッパリでしたが。)

 

自分の後ろにいる大きな気配にも

この時あまり怖さは感じていませんでした。

友人と一緒と言うのも、心強く感じていました。

 

そして、後ろからついて来る

得体の知れない存在と、

横で青ざめている友人と。

そんな状況なのに、

なぜだか分からないけど面白い感じがして、

私の頬は弛みかけました。

 

 

一方の友人は、今までに

霊的な体験で何度か怖い思いをしていました。

体験者の彼女が青ざめているのだから、

これはマズイのかも知れない。

後ろを振り向かずに進んで

とりあえず鳥居をくぐった方が良いのかもと思いました。

 

二人して一言も発することなく、

足早に鳥居をくぐりました。

 

そこまで来ると、

気配は消えてしまいました。

 

 

 

鳥居の外で再びお辞儀をして、

車に乗り込みました。

 

「感じた?」

 

「うん、怖かった~!

ちゃんとお詣りしなかったから、

怒られちゃったのかな?」

 

「そうだよね~、

引き返しちゃったもんね。」

 

この時の出来事は

お互いの中に鮮明な記憶として残りました。

 

友人は数年後、

「ごめんなさい」の気持ちを伝えに

改めてお詣りに行ったそうです。

 

一人で抜け駆け、ずる~い!

と文句を言ったのは、ご想像の通り(*^^)

 

 

意外な真相

 

ある時、

高野山の僧侶の方と

お話をする機会がありました。

 

霊視の能力がある方で、

お話を色々と聴かせて頂いていたのですが、

ふと倭姫宮での出来事を思い出しました。

 

あの気配は何だったんでしょう?

失礼な事をしてしまったんでしょうか?

と聞くと、

わずかに私の背後の空間を見つめ、

 

「あ~(笑)

それはね、龍が見送りに来てくれたんだよ。

ここまでご苦労様だったね、

気を付けて帰ってねって。」

 

「え~!そうなんですか!?

(って言うか、そんなことあるの!?)」

 

「怖くなかったでしょ?」

 

「はぁ~、確かに…。」

 

 

わ~、龍が見送ってくれたの!?( ;∀;)

何てアリガタイ…。

あの頃は友人も私も

馬とどっぷり一緒に生活していたから、

親近感を持ってくれたのかしらん?

しかも和種馬だったし。

(馬は、龍の化身とも言われます。)

ウルッと込み上げて来るものが…。

 

それはまぁともかく、

龍だったかどうかの真偽は一度置いて、

当時の記憶を検証してみましょう。

 

思い返してみると、

気配は大きかったし重量もあったけど、

こちらを押すようなことは

決してありませんでした。

 

と言う事は、

こちらの小さな歩幅に合わせて

一定の距離を保ちながら、

巨体をゆっくりゆっくり進めて

付いて来た、ということになります。

 

かなりの重量感でしたから、

少しでもあちらのペースが早ければ、

後ろから「追いかけられている」とか

「押されている」と感じたはずです。

 

これには、

こちらへの怒りどころか、

思いやりすら感じられるではありませんか。

 

私たちが鳥居をくぐり

お宮の境界の外へ出たのと共に

気配が消えたことも、

見送ってくれる為だったのなら合点が行きます。

 

あの時に、何となく

面白いような可笑しいような感じがしたのは、

相手の中に悪意がないことを

無意識に感じ取っていたからかも知れません。

 

 

 

幅のある巨体でしたが、

長さがあったかどうかは分かりません。

ですが重力に反して安定して浮いていましたし、

検証を総合してみて僧侶のお話は信頼できそうなので

龍だったと受け止めました。

 

さて、この龍神さま。

なぜに倭姫宮に?

倭姫とは一体どんな関係が?

調べてみました。

 

倭姫が天照大御神の遷宮場所を決めるために

方々を行脚している間、ずっと

守護として付き添っていた龍がいたとか。

 

その時と同一の個体かは分からないけれど、

倭姫宮に関する他の方のブログ記事なんかをみると、

龍が写真に写っちゃったりもしてるようで。

(下の画像の出展は、

http://wajo.cocolog-nifty.com/blog/2006/08/1_d75b.html。

左の光の中に、龍らしき顔が見えますよね。)

画像参照:http://wajo.cocolog-nifty.com/blog/2006/08/1_d75b.html

画像参照:http://wajo.cocolog-nifty.com/blog/2006/08/1_d75b.html

 

気を付けてね、って

見送りもしてくれたりする訳ですし。

意外と、ホイホイ色んな所に顔を出すのが好きだったりして?

う~ん、アリガタミが… (;・∀・)

 

…もしや、こんな感じか?

画像参照:http://www.yoshie.bz/sampl/animaru/tatu/05/06/01.png

画像参照:http://www.yoshie.bz/sampl/animaru/tatu/05/06/01.png

 

少なくとも、人間が大好きであることは

間違いないかも知れませんねぇ。

 

 

 

存在の仕方が違う何者か(異次元の存在と言いますか)に出会うと

未知ゆえに怖いと感じるのは

当たり前のことだと思います。

ですが、本当にマズイ相手なのかどうかは、

冷静に自分の内的に目を向けてみると

きっと分かるものなんだろうと思います。

 

相手が自分にどんな働きかけをしようとしているか、

それを余裕を持って感じ取れている場合には、

そのこと自体が

相手が善意の存在だという証拠かも知れませんよね。

(本当にマズイ場合は、そんな余裕はないでしょうから。)

 

どんな時でも、

自分の内側の感覚をまず信頼したい。

これは私の施術の姿勢でもあるんですが、

思い返せば、

背後の大きな気配を何となく面白く感じたこの体験も、

自分の感覚を心底信頼できる様になる

きっかけの一つだったんだなぁと思います。

 

 

 

 

小さな生命の優美さ~5月と6月の営業予定

 

初夏の様な、

まぶしい陽射しの陽が続いていますね~!

 

それもそのはず、

もうすぐニ十四節気では立夏。

蛙が鳴き始めるのを兆しとして、

夏が立ち(=始まり)ます。

 

引用:wikimedia commons "Amphibia_8016420"  (CC 2.5)

引用:wikimedia commons “Amphibia_8016420” (CC 2.5)

 

立夏は5月5日~7日の間に来るようですが、

国立天文台によれば

今年は5月6日の4時53分だそうですヨ。

http://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/yoko/2015/rekiyou152.html

二十四節気に詳細な時刻があったとは、

初めて知りました!

 

 

蛙と言えば…

もう何年も前の思い出があります。

友人と甲賀・伊賀に遊びに行った時の事でした。

 

当時はまだ馬乗りを仕事にしていて、

流鏑馬などの、馬を使っての演武なども

仕事の一環としてやる機会がありました。

どうやったら面白く見せられるかと言う勉強も兼ねて

遊びに行ったんじゃなかったかなぁと思います。

 

あれは甲賀の忍術村だったでしょうか、

見学しに行った際に、

地面で凍えているアマガエルが

たまたま目に留まりました。

 

まだ冬とは言え、

春のような暖かさの日もあったからなのでしょう、

 

小さく美しい緑のカエルは

間違えて冬眠から出て来てしまったようで、

寒さで凍えて身動きが出来ない、

といった風情でした。

 

気の毒に思ったので

手のひらにすくい上げて、

どうしてあげたら良いものかと思案しました。

 

手が温かく感じたせいなのでしょうね、

ほどなくして手の上で

ほ~っとアマガエルが脱力して

緊張が解けた様な感じがありました。

見ると、そのまま眠ってしまいそうな雰囲気。

 

その姿が何とも言えずまぁ~可愛らしくてDSC_0002_9

本当はそのまま

寝かせておいてあげたかったんですけれど。

 

安全に連れて帰る方法も思い付かず、

(なんせ小さいので、うっかり潰してしまいそう!)

ならば外気に長時間さらさない内にと、

出来るだけ早く

土の中に戻してあげる事にしました。

 

ちょうど、歩いていた道の横の土壁に

程よく小さな横穴を発見。

そっとカエルを置くと、

木の葉で入口を塞いで来ました。

 

木の葉程度で、

上手く冬眠に戻って

寒さを凌げるかどうか…。

 

死んじゃうかも知れないねぇと友人と話しつつ、

手の中でほっとしていたカエルを

置いて来る時の気持ちは、

何とも言えないものがありましたねぇぇ。

DSC_0002_28

 

 

…あらら、

初夏には似合わない

えらくしんみりした話になってしまいました。

DSC_0002_24

 

でも、手の上でほっとしていた感触は

 

得体の知れない大きな生き物(人間)にも

身を委ねられてしまう様な、

生き物が「自然」に対して

根本的に持っている信頼感のように感じて、

 

小さいけれどちゃんと生きているんだなぁ

という実感がありました。

 

その実感が何だかすごく嬉しくて、

今でも鮮明に覚えている

カエルとの大切な思い出です。

 

あ、ちなみに。

私が触れるのはアマガエルだけですヨ~(^▽^;)

 

 

さてさて!

すでにゴールデンウイークが始まっていますが、

5月と6月の営業についてお知らせ致しますね!

 

6月は、1週間ほど研修で営業がお休みとなりますので、

皆様になるべくご迷惑をおかけしない様に

早目に予定をお伝えさせて下さいね。

 

 

<ゴールデンウイーク期間>

neMu no ki の営業は、

祝祭日には関わりなく行っています。

 

ですので、水・日の定休日はそのまま、

それ以外の曜日は

祝日になっている日も営業いたします。

 

 

<5月>

通常通りの営業です。

定休日は毎週水曜・日曜

営業時間は11時~20時

ご予約の最終受付は17:30とさせて頂いております。

 

 

<6月>

札幌への研修の都合により、

6月6日(土)~13日(土)まで

臨時でお休みとさせて頂きます。

 

この代替として、

14日(日)は営業いたします。

 

水・日曜日は通常は定休日としていますが、

6月はご希望がある際には

ご予約をお受け致しておりますので、

どうぞ遠慮なくお問合せくださいね!

 

 

死の淵に立つ馬④ ~勝利と歓喜

前回からの続き

 

岳が歩き始めるのと入れ違いに、
大きな注射を手に獣医が現れた。

 

馬の様子を 遠目に見ながら言う。
殺すことはいつでも出来る。
ここまで来たら、トコトン付き合おう。

 

他にも、患畜はいる。
牧場も、明日は連休の初日、来客がある。
いつまでも待っている余裕はない。

 

待つと決めるのは、リスクを負うこと。
覚悟がいる。

 

岳と一緒に歩いていた場長が、戻って来た。

 

動き出してる様な気がするんだよなぁ。(腸が。)

 

彼は、希望的観測ではものを言わない。
だから、言葉に信頼性がある。
みんなの気持ちが、すっかり明るくなっている。

 

止まると、また腹痛が来るかも知れない。
ひたすら、歩かせ続ける。

 

「生き物の世話って、
愚直じゃなきゃ出来ないよね。ふふふ。」

 

「あははは、そうそう!
アホになんないと出来ないよね~!」

 

いつ動き出すとも知れない馬の腸を思いながら、
スタッフが馬場の中を歩かせ続ける。
その横に立って、 岳の腰に手を当てながら一緒に歩く。

 

腰仙関節から エネルギーを通すことで、
少しでも腸が動いてくれれば。

 

岳の腰の高さは自分の肩よりも少し高い。
腕は疲れて来るが、
あれだけの岳の頑張りを見たらこちらだって頑張ろうと思う。

 

場長もスタッフも、昨日から
ほとんど寝ていないと言う。

 

岳には、縁の深い家族もいる。
そこの娘さんも、横に並んで一緒に歩き続ける。

 

歩きながら、思い出話に花が咲く。
岳が大好きだった雌馬の福ちゃん。
彼女が先に逝ってしまった後、岳は抜け殻みたいになっていたこと。

 

若いメスが牧場にやって来たら、
たちまちに元気を取り戻してお尻を追い掛けまわしていたこと。

 

ボロを溜めておく深い穴にハマり込み、
抜け出せなくて、死にかけたこと。

 

助け出す為に救助隊まで来たのに、
牧場スタッフが置いた板を渡って、結局最後は自力で脱出したこと。

 

「いつだって、人には頼らずに
自力で何とかして来たんだよね、岳は。
誇り高い馬だよねぇ。」

 

「岳って、馬主がいたことあるの?」

 

「なかったと思いますよ~。
それに岳は、誰の馬にもならないですよね。ふふ」

 

「あはは、それもそうね!
誰も自分の馬には出来ないわね。」

 

岳の為に集まったのは、全部で9人。

 

人間の言う事は聞かないどころか、むしろ分かってて裏をかいて来る。
仕事だとあからさまに仮病を使うし、いい加減に自由気まま。

 

木曽馬の名誉のために言うなら、
彼らの多くは、真面目な性格。

 

岳は破格に、天真爛漫で、
縛る事の出来ない自由な魂なのだと思う。

 

だから、みんな時間を割いて、
一頭の馬の為にこうして集まっている。
いや、むしろ…

 

珍しく早めに帰宅する予定だった私の他に、
腰痛でたまたま仕事を休んでいた者、
雨天で仕事が流れて身体が急に空いた者。

 

偶然は、2つ重なると偶然ではないという。
こうなると、時間を作れるタイミングで集められたという気がして来る。

 

「俺が辛い思いしてるのに、
耳の傍でうるせえなぁって、
きっと今思ってるんだろうね~、ふふふ。」

 

岳の足取りは、少し落ちて来る。
でも、思ったほど重くはない。

 

大丈夫かも知れない。
でも、どうするかは 岳自身が決める事。

 

やれることはやった。
これで永の別れになっても、悔いはないだろう。

 

家へと戻る電車の中、メールが入った。

 

難産の末、
疝痛の原因と思しきものが除去された、と。

 

ここ最近で、こんなに心の底から
喜びを感じた事があっただろうか。
心臓からワクワクした感覚が上がってくる。

 

岳は、本当に生き返った。
…私達は、勝ったんだ。

 

闘っていた相手は、死ではなく
自分たちの中の都合や諦め。

 

もう終わりにしようと、
状況を明け渡したくなる誘惑。

 

…難産って、もしやほじくり出した?

 

そう、獣医さんが直腸からね!
30分格闘したのよ~!

 

みんなが帰途についた後、
岳の容態は一度急変したそうだ。

 

馬の心拍は、通常30~45と低い。
岳はずっと90で持ち堪えていた。
通常の倍。

 

120になると助からない。
一時、危険水域の100を上回った。

 

みんなの様子が明るかったから
獣医も迷いが出たんだろう。

 

全てが終わったのちに、
場長は振り返ってそう言った。

 

これで最後だから、
薬殺の前に腸の詰まりの除去を試みよう。

 

実力行使をすれば、腸壁を傷付ける。

 

そこが取り除けても、腸全体が
活動を取り戻す保証もない。

 

獣医が勝算を見ていたのか
一か八かだったのか、
それは分からない。けれど

 

最後は、プロの意地
だったのではないかと思う。

 

その後、朝までに
自力での排便が2回あった。
もう、本当に大丈夫だ。

 

ボロには最初、血が混ざったという。
岳と獣医の、奮闘の証。

 

これだから、
獣医は辞められないんだよなぁ。

 

そう言って、岳が助かったのを
一番喜んでいたのは獣医だった、と場長。

 

獣医は、
命を奪う行為の実行を許されている。
生殺与奪の責任を負う。

 

一方の牧場長は、
最終的に生殺与奪の決断をする。
その実行のタイミングを決めるのは、彼の責任。

 

思えば、姿の見えない時間が結構あった。
出来る限りタイミングを 引き延ばそうと、
獣医から離れていたらしい。

 

岳の様な厳しい状態から
復活する馬もいるには居る。
けれど、数は少ない。
獣医は、現実を見据えながら
現実的な判断をする。

 

場長は、馬をよく知り、
その個体の可能性を見ている。

 

どちらも、正しい。
立場と判断基準が違うだけだ。

 

最後の最後は、岳の底力。
でも、全てのタイミングが
噛み合わなければ、こういう
結末にはならなかったかも知れない。

 

横隔膜へのアプローチで、
少し腸が動き出したこと。

 

岳が倒れた時に強く腹を押して、
物理的に腸内のボロを
出口へ送ろうとしたこと。

 

獣医の手の届く範囲にボロがあって、
最終的に掻き出せたこと。

 

そして、みんなが岳に
気持ちを寄せ続けたこと。

 

「俺ってこんなに
人気あるんだって思って、
張り切っちゃったのかもね(笑)」

 

それぞれが持てる力を出し合えば、
状況は変えられる。
予想を覆すことだって出来る。

 

この経験は、私達を
一回り大きくしてくれた。
そう思う。

 

貴重な体験を与えてくれた岳に、
心から感謝を捧げよう。
そんな殊勝なことを言ったら、
きっとあの馬は
ニヤリと笑うだろうけれど。

 

 

終わり

 

 

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