目次
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- 筋膜に形成される線条の痕跡
- 織物としての筋膜
- 骨・筋肉・筋膜の役割分担
- 波打つシート
- 力やエネルギーの通った道筋
筋膜に形成される線条の痕跡
まず、なぜ線条の痕跡だと分かるのでしょうか?
これは実際の現象として、体表からラインとして辿ることが出来るためです。
経絡などと同じように目で見て取れるものではありませんが、
他の部位とは感触が異なるために、指先の感触によって知覚することが可能です。
線条の痕跡を形成する理由について、私見ではありますが
以下にいくつか可能性のある説明を試みてみたいと思います。
織物としての筋膜
まず一つには、筋膜は線維性のコラーゲンから形成されているという
物理的な性質が大きく影響していると考えられます。
電子顕微鏡で解析するとコラーゲンは管状の構造を示しており、
外からの強い衝撃に対しても身体を支えるだけの強度は、
この構造から来ていると考えられると思います。
その管状の線維質から形成される織物のようなシート(膜)、というのが
筋膜の構造的な特徴と言えるでしょう。
このシートは、身体が様々な動きを行う中で
どの様な影響を受けるのでしょうか。
骨・筋肉・筋膜の役割分担
骨と筋肉とは一体に動いているように思いますが、
よく体内感覚を観察すると、
動作時においての動き始めのタイミングに時間差があるようです。
それは、互いの役割分担から来る時間差だと思われます。
最初に脳の指令によって動くのは、骨のようです。
現実的に考えると、筋肉が先に反応して骨が動かされるとなるはずです。
ですが、感覚から言うと、骨の動きが先に感じます。
では筋肉の働きはと言うと、
骨の動きに付いて行きながら骨の動きを制御している感じです。
動きの中で、筋肉は能動的に動くのではなく、
受動的に制御しているという役割です。
例えば、ゴルフなどのスポーツで
「骨で動く」と教える指導者がいます。
柔らかい物体に物理的な力を加えると、
その力は物体の中で計算外の屈折をします。
骨のような硬い物質であれば、
加わった力は全体に均等に分散します。
その力を遠心力に置き換えると、
均等に力を受ける骨は、遠心力で自然と動かされます。
外側からの物理的な力によって、簡単に動かされる骨。
その軌道を正しく修正することは、筋肉が担います。
多くの場合、私たちは筋肉で骨を動かそうとします。
骨を動かし始めるのは、
動きの軌道を修正するよりもエネルギーを使います。
「骨で動く」意識を持つことは、
筋肉にとっては省エネになり、
しかもよりよく動きをコントロールできるようになるわけです。
波打つシート
異なる質感を持ち、
異なるタイミングで動くと考えられる骨と筋肉。
これらの異素材の仲を取り持つのが、
薄くて丈夫な筋膜です。
骨と筋肉の質の異なる動きを受けて、
時には引っぱられたり、時にはぎゅ~っと圧縮されたり、
時には波打ったりしながら、
受けた力を吸収したり分散したりしていると考えられます。
波打った時には、波の頂上や波の底には、一番強く力が加わります。
一つにはこうした波が作る山や谷が、
筋膜上の痕跡として線条に残るのではないか、と想像できます。
力やエネルギーの通った道筋
また、何らかの刺激や衝撃が加わった際に、
その力が走り抜けて行った道筋が痕跡として残った
という可能性もあるかも知れません。
私達のからだの中には、エネルギーが流れています。
それは、力や電気の流れのようなものとして感じ取ることが出来ます。
そして筋膜は、通電性が高く、エネルギーや電気の通りやすい組織です。
ショックや衝撃を受けた際、
息を呑むのと同時にエネルギーの流れも一瞬止まります。
流れの静止した中を、例えば物理的な衝撃が通り抜けたとしたら、
そこには擦過痕が生じることを想像出来ます。
この擦過痕は、衝撃の大きな内は様々な方向性で自由に広がると思いますが、
体内を進むうちに力が弱まると、筋膜の線維質に沿って進むようになると考えられます。
静止した中を無理に力が通り抜けると、
通り抜けられた箇所(組織)は強い緊張を持つことになります。
これが線状の痕跡を形成する理由の、またもう一つの試論です。