痛みは身体からの呼び掛け
身体は身体自身の調和やバランスを保つために、
独自の知性に基づいて活動しています。
これは言ってみれば、「私」という存在の中に、
自分のことを「私」として捉えている私たち自身の意識の働きとは別に、
身体という複雑な構造体を統制するために作用している別の意識がある
と捉えることが出来ます。
症状や違和感などの身体に生じる現象は、
身体の意識・知性が私たちに体内で起きていることに気づいてもらおうと、
コミュニケーションを取るためのサインとして身体が自ら出しています。
例えば寝起きに腰痛が出たりすると、
私たちは「昨日、重たいものを棚から下ろしたからな〜。」なんて考えます。
少し横道に逸れますが、
痛みや違和感は何かをやったことで出て来るという考え方はあまりにも当然になっていて、
私たちは疑問を持つことなくこの様に考えますが、
実はこれは違います。
この例の場合、重いものを下ろすことは、確かに腰痛の出る引き金だったのでしょう。
高いところから重いものを下ろすのに、腰を引き伸ばした状態で固める。
そうした姿勢が痛みにつながるわけです。
でも、もしこれが腰痛の原因だとしたら、
例えば腕や背中やお腹や下肢など、
他にも引き伸ばして固めた部分が同じように痛みを出していないのは
理屈に合いません。
同じように負荷が掛かったのに腰だけ痛みが出たということは、
元々腰には他の部位よりも強い緊張があったと言う事です。
腰痛を本当に治癒させたいと思ったなら、
腰に緊張が蓄積していた理由を探る必要があります。
この出来事を人間の側から見ると、
重いものを下ろす動作をきっかけにして蓄積していた緊張が腰痛として出て来た、
と言うことになります。
これを身体の側から見ると、
重いものを下ろす動作をきっかけとして、
緊張が腰に蓄積していることを私たちに気づかせようと腰に痛みを起こした、
となります。
腰に負荷の掛かる状況を上手に利用して、
私たちが身体の抱えている問題に気づけるように誘導するわけです。
これが身体の意識・知性のコミュニケーションの取り方です。