筋膜のメカニズム① 身体の形や動きには、どうやってクセが生じるか?

身体の知性

身体は、私たちの意識や思考とは別に、
独自の知性を持って身体を統合しています。

症状は、その知性が
私たち(=顕在的な意識)に体内の状況に気づいてもらうための
サインとして出しているものだと考えられます。

緊張を蓄積すると、様々な症状が出易くなり
身体の形も変わって行きます。
ですが、身体は本来の、自分のあるべき自然な状態を知っています。
そして常に、そこへ帰ろう帰ろうとしています。


緊張はなぜ蓄積するか:全身との関係性

緊張は、身体の形や動きに癖を生みます。

緊張の蓄積は、今ある歪みや捻れと言った構造のパターン、
いわば「形のクセ」を補足して、全身のバランスを取り戻そうとする、

身体の自然な反応の中で生じて行きます。
(外側からのケガなどの新たな刺激によっても、緊張は増えます。)

身体は蓄積した緊張やクセを自力で解放するスベを持たないので、
余分なものと恐らくは分かっていながらも
一旦それを自らの内に取り込んだ上で、
全体のバランスでカバーする、という方法を取っている訳です。

これは「補足・カバー」が目的ですから、
緊張やクセは、体内のどんどん奥へと隠されていきます。

筋膜に刻まれる、身体の歪みや捻じれ

筋膜という一枚の膜には、
いくつものクセ、つまり歪みや捻じれを形成している
線条の痕跡が幾重にも渡って刻まれています。

歪みや捻じれが蓄積すると、
先に生じていたものは圧縮され、
身体の奥の方へと隠されて行き、
その実体が分からなくなって行きます。

身体には想像以上に、
こうした歪みや捻じれの痕跡が大量に蓄積され、
(この痕跡は、線条の形を伴って体表に現れるものであり、
その人が身体をどう使ってきたかを
身体自身が記憶しているとも受けとめられます。)
しかも、それが実に上手く収納されているのです。


あたかも、パソコンでデータを圧縮して保存するように、
身体も過去の履歴を圧縮して記録しているようです。
この仕組みに気づいたときは、身体の仕組みの凄さに
思わずうなりました。

身体は自力でクセを処理できない?

さて、少し話がずれました。
身体には私たちの意識とは異なる固有の知性があると、
先ほど述べました。
では、この身体の知性は、こうした歪みや捻じれなどの
身体の構造のクセが生み出す線条の痕跡が、
どこに残っているかを把握していないのでしょうか?

臨床を通して私が感じている限りでは、
恐らく、身体は把握しています。
ですが、把握はしていても
自力でその影響を解除する事は難しいようです。

生命は、刺激を受け取り、
それに反応することで
変化・成長して行く存在です。

一旦刺激として受け取ったものを
なかったことにするような能力は、
生命の仕組みとして持ち合わせていないわけです。

原因となっているクセを解除する方法

施術においては、
体表にラインとなって現れるクセの痕跡 (クセを作っている非常に細かいライン)
を丁寧に辿ることで、身体の歪みや捻じれが解除されます。

力は全くいらず、その極小さなポイントに指先で触れるだけです。
(その箇所の細胞の反応が鈍い時には、
指を触れている時間が長くなったりはします。)

それはあたかも、クセを知覚し直しさえすれば、
からだがみずからクセを手放すかのように思われます。

クセの正体は緊張から生まれる張力

「クセ」の本態は緊張から生まれる張力、と言い換えても良いと思います。
緊張で組織が圧縮してかたまり、あるいはしこり化したり。

かたまった部分とは言っても、静的な不動の結び目ではありません。
組織自体が生きているのですから、
かたまった部分からは常に力が生じています。
緊張なので、自分の方へと引き寄せる力を発揮しています。
このために、クセが一つあると、
更なるクセ=張力によってカバーせざるを得なくなるわけです。

緊張と自発的な弛緩

ですが、しょせんは「緊張」。
私たちも、少しの緊張だったら
緊張がある位置を確認することが出来れば、
自分の意志でリラックス出来ますよね。

これは、身体にとっても同じことのようです。
外から「ここに緊張があったのね。」と確認してもらい、
そこに新たに刺激を受ける事で、
自力でゆるんで行けるようです。

また、身体には独自の判断があるので、
外からの強い力によって緊張部分をほぐそうというのは、
ちょっと無理がありそうです。
私たちも、イライラしている時に人から指図されたりすると、
強く抵抗したくなりますよね。
それは、身体にとっても同じだったりします。

緊張部分にさらに力が加わると
身体は防衛反応を起こし、
かえって固くなることが多いのです。
(なので、自分で強く揉んだりするのは、
実は身体の不評を買っているかも知れませんヨ^^)

付記:「クセ 」という語について

ここで言うクセとは、
からだの捻じれや歪みなどの、形や構造の変化を指します。
この変化に伴って、
静止での姿勢(立ち姿)や、動作時での動きそのものにもクセが現れます。

このクセは、言わばそのからだの持っているパターンであり、
からだの特徴を作り出したり、
効率的にからだを動かすためのプログラミングとして、
役立つものでもあります。

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