筋膜の特性と、身体に生じる緊張

 

 

筋膜が全身をつなぐ

筋膜を英訳すると、fascia。

fasciaは筋肉を包む筋膜に限らず、
内臓なら例えば心臓の心膜、
腹部全体を覆う腹膜など、

全身のあらゆる所を包み、
繋いでいる結合組織を指します。※
(※これは広義の筋膜の概念で、
狭義では筋肉と筋線維を包む膜です。)

 

筋膜のキーワードを挙げるなら
包む、つなげる、支える。

全身の様々な器官や組織を
大小の様々なレベルで包み、
それらをつなげ、

身体としての大きなまとまりを
形成しています。

つまり、身体の構造そのものを
様々な「層」で
支えていると言えます。

 

筋膜に緊張が加わると、
その部分はぎゅっと固まって
凝縮したり短縮したりします。

筋膜に包まれている器官の方は
それによって圧迫されたり、
引っ張られて位置がズレたりします。

これが痛みをはじめとする
様々な症状の原因になります。

 

筋膜は全身を一つに
つないでいるので、

筋膜のある個所に生じた緊張は、
波紋のように全身に伝わります。

(そのため、施術の際には
症状のある部位だけでなく
全体を細かく視る必要があります。)

例えば、
全身がストッキングで
包まれているのを想像してみてください。

そのどこかに
捻じれが生じていたとしたら、
どんな感じでしょうか?

 

ストッキングは薄いのに
強い伸縮性を持ちます。

そのため、もし捻じれて履くと
捻じれ感がダイレクトに伝わり、
絞られる感じもするかも知れないですよね。

筋膜の緊張によるズレは、
この感じによく似ています。

(通常、私たちは
筋膜上で生じている
こうしたズレを感知していませんが、

特異的な形でこのズレに
意識の焦点が当たってしまい、
体内にずっとズレを抱えて
不快感と闘っている方もいます。)

それに加えて、
捻れは例え足元で生じたものでも
頭の上の方まで伝わります。

どんな小さな緊張も、
筋膜を通して全身に波及するのです。

ちなみに当院の臨床では、
筋膜を通して体表の組織に
内臓の緊張も投射されることを
観察しています。

緊張の伝達は
「平面」で起きるのではなく、

3次元立体の肉体を縦横無尽につなぐ、
結合組織全体で生じるのです。

 

膜だからと、
決してあなどるなかれ。

こうして全身を
様々なレベルにまで
入り込んでつなぐ筋膜は、

たとえ相手が骨や歯だって、
位置が変わるくらい強力な力を
持っています。

ですが、
それほどに強力な膜でありながら、

生じている緊張の位置を
正確に把握しさえすれば、
そこに軽く触れるだけで自らゆるみます。

更には膜の緊張がゆるめば、
ズレた器官もまた
本来の位置に戻ります。

なんというか、
大変さを理解してもらうと
機嫌が直る私たちと似ています^^

ここが、この筋膜の持っている
面白い特性だと思います。

 

膜と言うと無機的なもののように
思うかも知れませんが、

筋膜は私たちの身体を構成する、
それ自体が「生きている膜」です。

こうした自発的・能動的な反応は
生きているからこその反応です。 

 

身体から浮き上がる「地図」

ある部位に出来た緊張は、
必ず他の部位の緊張と
結びついています。

そしてその結びつきは、
筋膜上で作られます。

いえ、より正確には
「力のグリッド」で生じ、
それが筋膜を通して
肉体に投影
されます。

 

筋膜に現れた
緊張同士をつなぐ結びつきは、
ライン(線の形態)を形成します。

そのラインの走行・経路を見ると、
私たちが身体のどの部位を
一緒に使っている(いた)か、

すなわち、どのように
身体を連動させて使っている(いた)かを、
目に見える「現象」で教えてくれます。

セラピーでは、
この経路を辿ります。

当院ではこれを、
一人一人の身体に描かれた、
いわば人生の「地図」を
読むことだと捉えています。)

この経路を丁寧に読むことで、
全身のバランスにどのような
狂いが生じていて、

それが現在の不調や不具合と
どのように関連しているのかを
知ることが出来ます。

(このようにして
身体から受け取った情報は、

セラピー/施術の中で、
あるいは次回の施術の前に、
分かりやすくご説明いたします。)