目次
- 身体は心の状態を左右する
- 姿勢が感情を引き戻す?そのメカニズムとは。
- 感情も、身体から生じる。
- 筋膜が教えてくれる身体と心の関係性
身体は心の状態を左右する
現代の私たちは、心理的な問題が
身体に影響を与えて症状を作ると考えています。
心が身体に影響を与える。
メディアやネットなどの情報を通じて、私たちは
それを当たり前の様に受け止めています。
ですが、実は違うのです。
心と身体は、双方向性で影響を与え合うものです。
心が身体に影響を与えることはもちろんありますが、
それ以上に、身体は心に強く影響を与えます。
心の問題をクリアするにも実は身体へのアプローチは必要になりますし、
身体からのアプローチで心の問題がクリアになる可能性も大いにあるのです。
なぜそんな事が言えるのでしょうか?
出来るだけ分かりやすく、お話していきたいと思います。
姿勢が感情を引き戻す?そのメカニズムとは。
ここで触れる「身体」とは、身体の機能のことではありません。
形や姿勢と言った、構造的な意味での身体を指します。
自分に自信がないとき、
人は猫背になったり胸を丸めて自分を守る姿勢を取りがちです。
自信のなさとは、心理面に出来た考え方の癖の様なものです。
いわば、心理的なパターン化です。
この心理的パターンは、状況を受け止める際の見方や視点を変えるなどの、
認識の仕方を扱う様々な心理療法によって解消することが可能です。
ですが、このパターンと結びついていた姿勢=猫背は形として残ります。
残存した猫背から、自信のない感情は再び引き戻されて現れて来ます。
この様にして、姿勢から感情の引き戻しが起きます。
猫背は、背中が丸まっていると言うだけではありません。
同時に胸側が縮こまるため、肺や横隔膜に緊張が生じます。
猫背が何年も続いているなら、肺や横隔膜では
その間ずっと緊張が生じている事になります。
ずっと緊張が生じているとはどういうことなのでしょうか。
例えば、肩に強い緊張が生じて、しこりになったとします。
しこりは、形成される時に強い緊張を生じた後は、
固まって物体化してしまった単なる固形物ではありません。
しこりが存在している間ずっと、そこからは
他の部位を引っ張るような力が生まれ続けています。
私たちの身体は、日々細胞が再生され、新しく生まれ変わり続けています。
それにも関わらず身体に形や動きの癖が残るのは、
細胞の再生には影響されない「力の作用」が働き続けているからです。
何年にも渡って肺や横隔膜が緊張を抱えていると、
自分の意見や考えを言葉として話そうとすると、まず緊張を感じます。
多くの場合は、この緊張感を意識では捉えていません。
無意識の内に緊張感によって押しとどめられることで
自分の思いを前に出すことが出来なかった抑圧感は、
自分に自信を持てない時の心の苦しさと感覚的に近いものです。
感覚と感情には混同が起き、長い間には互いに境目のない癒着した状態になります。
姿勢の癖によって心理的なパターンが引き戻されるのは、
こうした感覚と感情の癒着があるためなのです。
関連記事:ブログ『心のパターンと姿勢の関係性』
感情も、身体から生じる。
喜怒哀楽などの比較的単純な感情は、
内分泌系による分泌物の放出と言う
身体の物理的な機能が直接的な引き金となって生じています。
分泌の際には、内分泌器官は強い凝縮を起こします。
例えば、涙を流す時を思い出してみてください。
目頭がぎゅ~っと絞られるような痛みを覚えると思います。
これは、涙腺が凝縮を起こす感覚です。
この感覚を思い起こすと、悲しい気持ちも一緒に甦って来ないでしょうか?
少なくとも、悲しい気持ちを一緒に思い起こすことが出来ると思います。
繰り返し繰り返し、何度となく同じ分泌反応を行う内に、
内分泌器官は緊張した状態から抜け出られなくなります。
緊張が常にあることで、その器官は少しの刺激に対しても反応を起こしやすくなり、
感情が動くような時には他に先行して反応するようになります。
こうして、感情と対応する身体の反応パターンが形成されます。
身体に出来た反応パターンを解除しないと、
心理的なパターンの引き戻しが起こるのはこの為です。
これを逆手に取れば、
身体の反応パターンを形成している緊張を解くことが出来れば
心理的なパターンは自ずと消えると考えることが出来ます。
筋膜が教えてくれる身体と心の関係性
以上に述べて来た事は、
あまり一般的な考え方ではないかも知れません。
臨床と、自分自身への自己メンテナンスを通して、
筋膜を用いての施術が引き起こす身体の変化を見、体験して来たことで、
こうした理解をするようになりました。
筋膜は、体内の組織や器官を一つにまとめ、
位置関係を保つ役割をします。
内分泌などの体内奥深くに在る器官も、
筋膜に繋がる膜組織によって一つに繋がっています。
筋膜を通して、直接触れているかのように変化を促し、
変化を感じ取ることが可能になります。
筋膜へ刺激をすると、刺激する箇所に合わせて
姿勢が変化していきます。
そして、その姿勢の変化がどんな心理的な変化を一緒にもたらすか、
分かりやすい関係性として観察することが出来るのです。