心のパターンと姿勢の関係性

 

 

今日は、心と身体がどんな風につながっているかについて、

分かりやすい表現をしてくれた二人のクライアントさんのお話を

書いてみたいと思います。

 

 

膝関節の複層化した捻じれ

 

Mさんは、身体に鮮明な捻じれの感覚を持ちます。

 

最近の施術の時に、左膝にあった捻じれが

施術すべきポイント*1として出てきました。

 

(*1施術ポイントは施術者が決めるのではなく、

身体全体の状態を細かく読み解き、整理して行く過程で、

身体の側から自ずと提示されます。)

 

施術を通して、捻じれは幾重にも複層化しているのが分かりました。

 

また、施術者の加える刺激に対しての筋膜組織の反応・変化が

他の部位に比べると非常にゆっくりで、

 

渋々動いているような、

動きたいけど重たいものを引きずっていて動けないような、

そんな感触が含まれていました。

 

最終的に、膝の関節を形成している脛骨が

外側にズレ、更に軽く内旋を起こしながら固まっていたのが分かりました。

 

筋膜の反応が進んで膠着が解けるにしたがって、

それらの癖は解除されていきました。

 

 

膝に捻じれの現れた理由とは?

 

施術後、なぜ膝関節にしつこい捻じれが形成されたのか、

原因について考えたことを、Mさんと話し合いました。

 

施術中、私は膝の捻じれが変化していくのを見守りながら、

この捻じれの感覚はどんな「感情」や「気持ち」に置き換えられるかについて

感じ取ろうとしていました。

 

 

身体の形は、

世の中に対するその人の構えであり、向き合い方そのものです。

 

ここは、大切なポイントです。

心理的な要素が身体に反映されると考えるのが昨今では主流ですが、実際には

身体の形・構造が、コミュニケーションにおける心理パターンを作っている

と言っても過言ではないと、私は考えています。

 

この考えは経験から出て来たものですが、

先日初めていらしたクライアントさんが同じ考えを持っていた事で、

私の個人的な発想にはとどまらないことが分かりました。

 

 

身体の状態が、心の状態を引き戻す

 

このクライアントさんは、心を扱うセラピストでした。

耳にした音に色や形が伴う様な共感覚も持っています。

これは、生得的に持っている性質の様です。

 

その繊細な感受性ゆえに、幼少の頃から様々な問題を抱え込んでいたと言うRさん。

それらをクリアしないと、と言う意識はかなり早い段階から持っていたそうです。

 

心理面での問題に本格的に取り組み始めて20年ほど、

一つ一つクリアして来て、今は隠す必要のあるものはないと言います。

 

初回の施術が終了した時、

彼女はこんな感想を伝えてくれました。

 

「今日施術でたどった所は、

自分が一つ一つバラバラにクリアして来た所が(心理的な問題)

こんな風に繋がっていたんだ、という事を見せてくれました。

 

心理的なものは自分で解決出来たけど、

それと関連して身体に残っているものがあって、

何かの時には、決定的じゃないけど、それに引き戻される感じがありました。

それが消えないと、本当にクリアにはならないと感じていたので。

 

左の肋骨の下は、自尊心と関係してるんです。」

 

…今日の施術で、重点的にアプローチした所の一つでしたね。

 

「そう。私、前は自尊心が低かったんですよ。

その痕跡が、あそこに残ってたんだなって。」

 

Rさんが左肋骨弓と自尊心との繋がりに気付いていたように、

身体の部位を様々な感情との対応関係の中で理解する方法もあります。

 

彼女の場合は共感覚を持っているので、

その関係性についてははっきりした実感を伴って理解していると思われます。

 

 

姿勢と感情の関係性

 

私の場合は、

姿勢と感情を対応させて考えます。

 

これは、筋膜を通して自分自身のメンテナンスをする内に、

身体の形の変化に伴って姿勢が変化すると

外の世界に対する自分の気持ちの構え、向き合い方も変化することを何度なく体感したためです。

 

①ちぢこまる胸

 

分かりやすい例で言えば、

胸が縮こまっている状態は、自分の心臓を守る形です。

 

同時に、背中を伸ばしにくくなり、目線は下に下がります。

心臓=自分の本質を隠し、相手よりも下に構える姿勢になる為、

どうしても他者に対して遠慮しがちになります。

 

②太腿の盛り上がりと強く締まった下腹部

 

また、クライアントさんの中で比較的多い例として、

下腹部が強く締まって、大腿部が前に盛り上がっている状態があります。

 

下腹部をぎゅっと締めるためには、

上半身を強く起こさなくてはならなくなります。

 

腹に溜めることと言えば、本音です。

本音を隠して、上半身を大きく見せようと構えている事から、

他者に影響されまいとする警戒心や、弱さを見せまいとする強がりなどを

対応する気持ちとして考えることが出来ます。

 

 

膝の捻じれは、自分らしくいる事を難しくする

 

さて、Mさんの膝へと話を戻しましょう。

Mさんの左膝についても、同じように姿勢と感情の対比で捉えました。

 

膝と言っても、左右どちらへのアプローチかによって意味合いが変わる部分もありますが、

ここでは置いておきます。

 

膝は捻じれて、膝から下が外側に彎曲した様になっています。

これでは、膝から上の重さを支えることが困難です。

上半身がまっすぐに立つことを、膝で拒否していることになります。

 

まっすぐに立つというのは、自分が自分らしく存在しており、

それに満足している感覚を生みます。

 

膝が外側にズレている時の身体の感覚は、

自分を外の世界に見せる事から避けているような、

自分らしくいる事から逃げているような、

そんな気持ちの時に感じている内的感覚に近いと思うのです。

 

 

ドンピシャではないかも知れないけど、

そんな感じに近いのではないかと思うとお話しすると、

Mさんは「ドンピシャです~」と。

 

自分のすべてのストレスの元は家族なのだと話し出しました。

 

家族の中で一番年下のMさんは親兄弟の不満を蓄積した形で受けており、

今までかなり気を使ってあっちこっちと調整していた事に

最近気付いたのだそうです。

 

 

膝が伸びた際に、Mさんはこんな事を言いました。

 

「膝の関節がすり潰されるみたいな感じがあったんです。

 

骨はちゃんと伸びて成長したいのに、

まわりの筋肉とか筋膜とかが一緒に成長しなくて邪魔してるような感じで。」

 

(Mさんは、自分の違和感の原因を考えて調べる内に、

もしかすると筋膜ではないかと気づかれて当院にいらっしゃいました。)

 

これは、先ほどの家庭での状況と合致していることにお気付きでしょうか?

 

骨とは自分という存在を支える軸であり、自分そのものです。

一方の筋肉や筋膜は、外の刺激に柔軟に対応し影響を受けながら、折り合いを付けます。

 

骨と筋・筋膜の捻れた関係性は、自分自身の在り方を大切にしたいのに、

家族との関係性の中で在り方が左右され、

思った様な自分でいられない状態と相似形なのです。

 

 

捻じれも、自分を守るための工夫として生じた

 

ですが、骨と筋・筋膜との間にずっと捻れを感じ続けて来た事で、

Mさんは自分の中心軸まで影響されない様に、

しっかり自分を守って来たのだとも考えられます。

 

捻れなどの違和感を長い年月の間ずっと感じ続けるのは、

想像以上に大変なことです。

通常は、無視している内に感覚がマヒし、忘れて行きます。

忘れても捻れの存在は消えませんが。

 

その違和感から逃げ出さずに、捻れの感覚を直視し続けて来たMさんは、

外のどんな力にも屈することのない、非常に芯の強い人なのかも知れません。

 

実はすんごい頑固者だったりして~

 

そうお伝えすると、Mさんは、多分そうだと、楽しそうに笑いました。

 

 

身体の変化を求める際に、大切なこと

 

MさんとRさんの事例から、

身体の形は心理的パターンと対応しており、身体が整うことで

思いや考え方の癖も変化すると考えられます。

筋膜は、身体のペースに合わせながら、その変化を着実にサポートします。

 

ですがそれには、まずご自身で準備して頂くべきことがあるのも、

事例から汲み取ることが出来ます。それは、

 

自分を変えよう、成長しようとする意識を持つことと、

 

変化・成長とは、今までの自分の在り方を手放して行く、

決して楽とは言えない道のりだと理解すること、

 

そして、その道のりの中にあっても諦めず、

自分で自分を鼓舞し続ける強さを持つことです。

 

この準備が出来ていればこそ、身体の変化を、

身体だけにとどまらない深い体験として受け取ることが出来るのだろうと思うのです。

 

 

 

 

 

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