奥深き、写経体験。

先日、京都の東寺を訪れた際に、
写経を体験して来ました[#IMAGE|S43#]写経は単調な作業。
でも、だからこそなのでしょう、
沢山の「自分の癖」が見えたりして。
東寺の写経は、
榊莫山さんの手による
般若心経をなぞるという形式なので、
習字には自信のない身でも、
心易く取り組むことが出来ます。
お寺の方に聞いたところ、
大抵は40分くらい、早い方だと
30分くらいですよ~、とのこと。
今、京都は「冬の旅」と称して、
様々な寺社で普段は目にする事の出来ない
秘仏などを特別公開しているところが
沢山あります。
そうした箇所には地元の方がいらして
ボランティアで説明をして下さるので、
建造物や仏像の由来やら来歴やらを、
細かく聞くことが出来ます。[#IMAGE|S23#]東寺でも、日本で最も高い五重塔の
内部の公開をしているし、
宮本武蔵の手による襖絵なども観られるし。
それに加えて、日本三大門の一つと言われる
知恩院の三門の楼上にある釈迦如来像も観たいし…。

時間は足りるかな?[#IMAGE|S39#]でも、40分で終わるなら大丈夫かな。
お姉さん、写経をしたいのですが。
「寒い中ですけど、頑張ってくださいね。
一文字一文字を仏様だと思って、
心を籠めて書いて下さいね。」
食堂の中に用意された写経所で、
莫山さんの文字に向き合います。
ちなみに真冬のお寺のお堂の中、
暖房器具は一切ありません。
莫山さんの文字は丸みがあって可愛らしく、
それでいてどこかで達観しているような
透明感があって。
私には、そんな印象に思えました。
それを壊さぬように、
筆跡からはみ出ることの無いように。
最初は、筆先を
食い入るように見つめながら
書いて行きます。
始めの「摩訶般若波羅蜜多心経」
と書き終わったところで、
何だか時間が掛かるなぁと^^;
この先200何文字かを
このペースで書くのは、
果てしないなぁなんて考えがチラリ。
書き進めるうちに、
文字を一生懸命なぞっているはずなのに、
何故か右側の角では
筆致が足りなくなる現象が。
莫山さんよりも、早いところで
曲がってしまうんです。
はて、なんでかなぁ?
観察しながら書いていると、
ははぁ、原因を発見。
習字では、筆を立てて書きます。
普段は鉛筆やボールペンを
斜めに持ちますよね。
筆は縦に持ったものの、
目はいつもの習慣で、
筆を左下から捉えていました。
左下から筆先をのぞき込むような感じで。
だから、右の隅の方へ筆が進むと、
手本の文字と筆の重なりが
ちゃんと見えない。
ふむ、では姿勢を正しまして。
今度は筆を上から見下ろすように
構えました。
文字を真下に見ながらだと、
筆使いと莫山さんの文字とが
はっきり確認できます。
そうか~!だから筆は立てて書くのね~[#IMAGE|S38#]ちなみに、この姿勢だと
ちょっと机が高く感じて、
筆の頭が自分の顔に当たりそう。
なるほど、だから昔の文机は、
あんなに低かったのかな~。
頭ではよく知っている様に
思っていることでも、実際に体感すると
異なる意味づけに気づいたりします。
それが筆遣いのような小さなことでも、
気付けたときは本当に嬉しいのです[#IMAGE|S12#]身体を通しての「体験」は、
思考の枠には捉えきれない、
様々な位相の情報を与えてくれます。
何かに取り組む時には先入観を持たず、
まず自分が感じることそのものを
大切にする。
感覚で感じ取った情報は、
思考で捉えようとする情報とは、
その厚みも多様さも比較にはならない
豊かさを持ちます。
ただ、その豊かな意味に気付いて
理解するには、時としてかなりの時間を
要する場合もありますよね。
姿勢を正して書く内に、
今度は背中と肩が張ってきました。
ムリに背筋を伸ばしてるわけじゃないのに、
なんでかな~。ふむ。
もう一度、わが身を観察です。
ははぁ、分かりました。
一生懸命、なぞろうなぞろう、
丁寧に丁寧に。莫山さんの字の味を
損なわないように、繊細に。
そうやって書いている内に、
息を詰めていました。
息を詰めると、身体は自ずと緊張します。
寒さも手伝って、背中は
かちこちになってたんですね。
今度は、ゆっくりと
意識的に呼吸をしながら書いてみました。
文字の輪郭が、滑らかになりました。
さらに何度か試すうちに、
こんなことも発見。
今までは、文字のハライを書く時に、
ちょうど詰めていた息を
吐き出すタイミングにしていた様です。
呼吸が急に動くので、
それに筆の動きが影響されて
ハライの勢いや太さが
まちまちだったのだなぁと。
身体の動きを制御するには、呼吸が大切。
ヨガだって気功だって、
息は詰めずに自然に続けるようにって
教わります。
ふむぅ、これも
よく知ってるつもりだったんだけどなぁ^^;
自然な呼吸で書き始めたら、今度は
一文字一文字が、どうもまとまりに
欠けているのが気になり出しました。
莫山さんの文字をなぞってはいるけど、
一つの文字としての有機性や統合性が
何だか抜け落ちてるなぁと。
で、事細か〜くなぞるのを止めました。
文字をぱっと確認して、その印象の中で
一文字書き上げる、みたいにして。
は~、自由だなぁ、
そして書くのが速いなぁ!
「一文字一文字を仏様だと思って」
と言われた時に、私の中ではそれが
「ゆっくり丁寧に」に
置き換わっていたんですね。
でも別に、仏様は
自由で速くても良かったんだなぁと。
自由に素早く書き上げられる文字には、
もはや莫山さんの面影はありません。
莫山さんの力を借りて、
「私」が飛び出てきちゃった感じです。
でも、良いんです。それで。

写経は、内的世界での
感覚と思考の修養なんだなぁ。
そんなことを思いながら終了した時には、
1時間半が経っていました。
どれだけゆっくり書いてたんだか^^;
そりゃもう、寒くてかちこち。当然です。
でもね、とっても楽しかったんです。
静かに自分と向き合う時間って、
贅沢だなぁって。
それにしても…
ひゃあ~![#IMAGE|S8#]知恩院に間に合うかしら~!?
寒空の京都市中、自転車をこぎこぎ、
一路 知恩院へと向かうのでありました。
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