つわりは、胎児の苦しみの反映③

 

目次

・個体発生は系統発生を繰り返す

・胎児は「上陸劇」を体験する 」①

・胎児の変容に関する三木成夫氏の研究

・発生過程は、折り紙に似ている

・つわりと、胎児が体験する「上陸劇」 」②

・生物の体を変えた、重力の作用

・母体が「上陸劇」を共有するメカニズム─筋膜的試論

・重力と歪みとつわり

・つわりに個人差があるのは、なぜか  」③

 

 

▼生物の体を変えた、重力の作用

 

「上陸劇」の最中にいる胎芽は、

生後4日目のニワトリの胎仔と同じ位で、

小指の爪の半分以下の大きさ。

胎芽(=胎児)を包む胎嚢で

5~13mm程度の大きさとのことです。

 

それにしても、

そんなにも小さな胎芽が、

大きな母体全体を揺るがして

「つわり」を引き起こすような力を、

どうしたら持つことが出来るのでしょうか。

 

何度も繰り返しますが、

三木成夫氏は、胎芽の変容過程を

生物の「上陸」を再現するドラマと表現しています。

 

生命進化における上陸のドラマでは、

重力の影響が生物の身体構造に大きく影響を与え、

その結果として呼吸の仕組みが

エラから肺へと大きく変化しました。

(詳細を知りたい方へのお勧め記事:

http://nishihara-world.net/app/Blogarticleview/index/ArticleId/29

 

 

 

胎児の変容の過程は、

遺伝子情報の中にシナリオとして組み込まれ、

それに沿って自動的に進行されるもの。

そういう印象を、私自身は持っていました。

 

つまり、時間さえ経てば

放っておいても始めから終わりまで展開される、

手間のかからない正確なプロセス、

というイメージです。

 

ですが、つわりが

その変容過程と密接に関わるとすると、

ただ単純に順を追って

さらりと再現されていくプロセスなのではなく、

 

周囲の環境をも

強烈に巻き込んで再現される、

思った以上に大掛かりな

生命ドラマだという事を

示している様に思えます。

 

周囲の環境と言えば、すなわち

母胎であり、母体です。

 

そしてそこに、

生物の体を大きく変化させた重力が

重要な要素として

関わって来るのではないかと思うのです。

 

 

 

▼母体が「上陸劇」を共有するメカニズム─筋膜的試論

 

私たちの身体は、

結合組織を中心とした膜構造によって

柔軟性を持ちつつ安定的に支えられています。

 

膜構造を通して見る身体は、

がっちりとした物質的構造というよりも、

むしろ「空間」として現れて来ます。

すなわち、空間構造としての身体です。

 

身体構造を支持しているのが

「膜」であることから、

体内空間では圧力の変化が容易に起こり、

またその調整が絶え間なく行われています。

 

上陸の際には、

生物の構造は重力の変化をきっかけとして

両生類へと大きく変容を遂げた訳ですから、

 

それを再現するには、胎嚢の中でも

同じような重力変化を

必要とするのではないかと思います。

 

とは言え、それは

全く同じ条件や環境である必要はなく、

「重力で作られるような

位置エネルギーの場があれば良い」わけです。

(中田力『脳のなかの水分子』p111 )

 

 

 

胎児の変容を促すには、

ホルモンなどの化学的な刺激が

その大きな役割を担っています。

 

ですが、ここでは化学的な作用ではなく、

物理的な刺激の方へ

焦点を絞って話を進めたいと思います。

 

物理的な刺激は、

私たちも身体で感じ取りやすいものであり、

直接的な感覚として理解し易い面があります。

 

生理化学的な側面への理解は大切ですが、

そこからは生身の生命同士の関わりは

実感しにくいものです。

 

母親は、つわりを通して

胎児の苦しみを共有しているのであれば、

それはもっと実感を伴った

直接的な仕組みによるのではないかと思うのです。

 

 

 

胎芽は、卵膜(羊膜、絨毛膜、脱落膜)の

前身である胎嚢(たいのう)に包まれ、

その空隙は羊水が満たしています。

 

羊水の分泌と水量の調整は、

羊膜によって行われています。

 

この時、羊水が減少すれば

胎嚢は陰圧で内に引っ張られて緊張を帯び、

あるいは胎嚢の収縮が生じれば、

胎嚢の内部空間では圧力が高まります。

 

残念ながら、

胎嚢内の羊水圧の変化については

それに関する研究を見つけることが出来ませんでした。

(血眼に探した訳じゃないので、

本当はあるかも知れませんが~(;^ω^))

ですので、あくまでこれは私の想像と

臨床での「膜」組織に対する感覚的な理解に基づいた、

試論です。

 

羊水圧が変化すると仮定して、

その理由としてはこんな事が考えられそうです。

 

胎芽で生じている変容は、

胎嚢内の空間に歪みを生み出します。

また、羊水の対流を引き起こすはずです。

これが、胎嚢に緊張を生む、というのが一つ。

 

またこの頃には、

心拍が確認できるようになります。

心拍の強く規則的な振動が加わることで、

胎嚢の強度にも変化が生じるかも知れません。

 

こんな風に、

胎嚢が帯びる緊張や収縮の増加、

あるいは胎嚢の強度が変われば、

胎嚢内の圧力は高まります。

 

上陸の際に生物が味わった重力変化は

疑似的に再現され得ると考えられます。

 

 

 

胎嚢を形成している3つの膜の内、

脱落膜は母体由来の組織で、

羊膜と絨毛膜は

胎児の中胚葉由来の組織です。

 

中胚葉とは、初期受精卵の中にあって

後に皮膚や筋肉、筋膜となる組織です。

つまり、身体の最外側にあって、

外界との境界面を担う役目を持ちます。

 

この様に、胎嚢では

胎児と母親由来の組織が

互いに密に向き合っている状態にあります。

 

受精卵がどんなに小さくても

そこでもし圧力変化が生じれば、それは

母子のいわば接触境界である胎嚢から

子宮内膜に伝わり、

母体全体に伝播するはずです。

 

この時、圧力刺激を伝達するのは

筋膜を中心とする

結合組織のネットワークの役割です。

神経よりも速いスピードで、

全身に情報を伝達します。

(参照:https://www.youtube.com/watch?v=uzy8-wQzQMY)

 

 

 

▼つわりと歪みと重力と

 

胎嚢で生じた圧力刺激が

つわりの諸症状に変換される理由は、

以下の様に考えられそうです。

 

ここからは、少し

突飛な話に感じるかも知れませんが、

本人的には至って真面目にお話します(;^ω^)

 

 

 

主なつわりの症状を見ると、

吐き気、嘔吐、味覚や嗅覚の変化、

胃や胸のむかつき、唾液の増加など、

様々ありますが、いずれも

身体の正中線上で起きている事が分かります。

(参照:http://www.marienremedy.com/column/c1060/c0004.html

 

そして、子宮もまた

正中線上に位置しています。

 

5~13mm程の胎嚢内の変化は、

現実的な物理力として母体に作用するには

あまりに小さすぎて、

とても想像しにくいことだと思います。

 

おそらくは、

物理的な力による押し引きと言うよりも、

胎嚢で生じている「歪み」が母体に伝わり、

 

その「歪み」の感覚が、

私たちの正中線に作用する「重力」を重くさせ、

そこに位置する臓器に

影響を与えると思われます。

 

これには、もう少し説明を加えますね。

 

「重力」とは、空間に「歪み」を生む力です。

これはアインシュタインが説いたことで、

惑星などの大きな質量を持つものを想定して

考えられた理論です。

(参照:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%82%BF%E3%82%A4%E3%83%B3%E6%96%B9%E7%A8%8B%E5%BC%8F

 

ところが、私たちの身体の中でも、

この「重力」と「歪み」の関係性を

みる事が出来ます。

 

(これは、

筋膜と言う「膜組織」を通して施術を行い、

空間構造として身体を捉えていることで、

分かって来たことです。

一般的な考え方ではありませんので、

ご注意くださいね(;^ω^))

 

 

「重力と歪み」の実例を~

 

 

 

▼ホログラフィックな身体

 

もう一つ考えられるのは、

私たちの身体が持つ

ホログラフィックな性質です。

 

例えば、リフレクソロジーなどは、

足裏に全身の情報が投射されていると

考えています。

 

東洋医学では、舌診と言って

舌の様子で全身の状態を診ます。

 

以前、血液観察会に参加した時には、

血液一滴の中に全身の情報が入っていると

教えてもらいました。

 

私自身も、施術の中で

頭部で起きている歪みや捻じれは

胴体でより大きく分かりやすく展開されますし、

胴体で起きている変調もまた、

頭部に同じ形で現れるということを

経験しています。

 

 

 

 

 

それがホログラフィー的に

母体全体に展開されている

 

 

 

 

 

 

その後の約3週間、妊娠8~11週目は、

母体につわりが生じやすい期間となります。

 

胎児は、人として必要な「形」を

第7週までに備え、

次の3週間ではいよいよ

 

それまで母親が補完してくれていた機能を

各器官でしっかり果たせる様に、

急速に成長が進んで行きます。

(参照:『こうして生まれる』アレグザンダー・シアラス p.224)

 

こうした急激な成長を受けて、

この期間は卵膜の内圧も歪みも

刻々と変化すると考えられます。

 

その目まぐるしい変化が、

母体につわりを生じやすく

させているのではないでしょうか。

 

 

 

▼つわりに個人差があるのは、なぜか

 

つわりは強く出る人もいれば、

軽くて済む人もいます。

 

出方の個人差が大きい理由は、

一つには

①受精卵の着床の位置の違いと、

もう一つには、

②子宮の状態の違いが考えられそうです。

 

②の方から説明しますと、

例えば子宮に緊張が無く、

内側で育っていく胎児の変化を

子宮がリラックスした状態で受け止められるなら、

つわりは強く出ずに済むと思います。