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つわりは、胎児の苦しみの反映①

 

目次

・個体発生は系統発生を繰り返す

・胎児は「上陸劇」を体験する 」①

・胎児の変容に関する三木成夫氏の研究

・発生過程は、折り紙に似ている

・つわりと、胎児が体験する「上陸劇」 」②

・生物の体を変えた、重力の作用

・母体が「上陸劇」を共有するメカニズム─筋膜的試論

・つわりに個人差があるのは、なぜか  」③

 

 

▼個体発生は系統発生を繰り返す

 

胎児は、母胎で過ごす初期の期間に

その姿が魚類から両生類を通り抜け、

哺乳類に至るまで変容することを、

ご存知でしょうか?

 

19世紀に唱えられ始めたこの説は反復説と言い、

「個体発生は、系統発生を繰り返す。」

という言葉で知られています。

今もこの考え方は、発生学の一翼を担っているようです。

(参照:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%83%AB%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%98%E3%83%83%E3%82%B1%E3%83%AB

 

ちなみに、

うちの母に知っているか尋ねたところ、

そんな話初めて聞いた~!とのこと。

 

あら~、思っていたほど

一般的な話ではなかったのか~(;^ω^)

 

 

 

水中でエラ呼吸をしていた所から、

陸上に上がって肺呼吸をするようになり、

ついには二足歩行へ。

 

こうして、形態と機能の変化を繰り返しながら

地球上には生物の種が発生して来ました。

このことを、系統発生と呼んでいます。

 

 

 

▼胎児は「上陸劇」を体験する

 

解剖学者であり発生学者であった三木成夫は、

生物が水から上がり陸上に生息し始めた出来事を

「上陸劇」と呼んでいます。

 

そして、この「上陸劇」が

胎生初期のわずか40日程の間に

胎児の体内で再現されることを

明らかにしています。

 

私が筋膜療法を教わった師匠は、

三木成夫に深く傾倒していました。

授業では何度となく彼の話が出て来たのですが、

当時(10年前!)は、まだ

その重要性がよく分かっていなかった私。

師の話はするりと耳を抜けていた様な…(;・∀・)

 

最近、違う方面の勉強に参加をしていて

再び三木成夫の名前を耳にしました。

お~、こんな所で出会うとは!

それを機に、

著作を読み直し始めました。

 

その中で、

「へぇ~!なるほど~!」と思う記述を発見。

それは要約すれば、

 

つわりは、

胎児が体験する「上陸劇」によって起こる、

というものでした。

 

つわりが起きる原因は、通常

ホルモンバランスの変化であったり

母体が胎児を異物と認識して起こる

免疫反応であると考えられており、

まだ正確には、

メカニズムが解明されていないものなんですね。

 

胎児が成長過程で体験する苦しみを

母親も一緒に共有している、

それが「つわり」だとしたら。

 

お母さんが辛いつわりを味わい、

乗り越える事の意味も、

全く違って来ると思うんです。

 

 

 

蛇足ながら、正確に言えば

この時期はまだ胎児ではなく、

胎芽と呼ばれます。

 

耳や手足などの

人間としてのパーツがそろい、

初期の軟骨が骨に置換され始めて、

頭が少し起き、身体が少ししっかりするのが

胎生8週目頃。

それを境に、「胎児」となります。

(参照:①『こうして生まれる(a Life Unfolds)』 アレグザンダー・シアラス

http://www.ikujizubari.com/jiten/taiga.html

 

 

 

今回のブログでは、

つわりと胎児の「上陸劇」の関連を

三木氏がどの様にして気付いたのか、その過程を

著作『海・呼吸・古代形象』の中の

記述に基づいて説明した上で、

 

胎児の体験が母体に伝わるメカニズムについて、

筋膜的な考察を行っていきたいと思います。

 

長くなること必至なので(;^ω^)

数回に記事を分けてアップする予定です。

 

 

 

▼今後のアップ予定

 

第2回内容:

・胎児の変容に関する三木成夫氏の研究

・発生過程は、折り紙に似ている

・つわりと、胎児が体験する「上陸劇」

 

第3回内容:

・生物の体を変えた、重力の作用

・母体が「上陸劇」を共有するメカニズム─筋膜的試論

・つわりに個人差があるのは、なぜか

 

つわりは、胎児の苦しみの反映②

 

目次

・個体発生は系統発生を繰り返す

・胎児は「上陸劇」を体験する 」①

・胎児の変容に関する三木成夫氏の研究

・発生過程は、折り紙に似ている

・つわりと、胎児が体験する「上陸劇」 」②

・生物の体を変えた、重力の作用

・母体が「上陸劇」を共有するメカニズム─筋膜的試論

・つわりに個人差があるのは、なぜか  」③

 

 

▼胎児の変容に関する三木成夫氏の研究

 

三木氏は実証主義であったようで、

ご自身の感覚や経験を非常に大切にされていたことが、

著作から伝わって来ます。

(以下は、『海・呼吸・古代形象』/三木成夫を参照。)

 

 

胎児の姿が系統発生を辿って変容する事は、

多くの胎児の奇形の心臓標本を

目にする機会を通して、

直感したようです。

 

奇形の心臓は一見、

無秩序な異形に見えますよね。

 

実はそれが、

様々な古代生物の心臓とそっくりだ

と気づいた事が、

探求の始まりだったようです。

 

 

 

直感を裏付けるための

学問的な実験と観察は、

ニワトリの胚を用いて行われました。

 

小さな小さなニワトリの胎仔の心臓は、

生後2日目の卵の中で動き出します。

その心臓に墨汁を入れ、

肺の血管の出来る過程を調べました。

 

生後4日目の間だけ、

墨汁の注入が難しくなる事から、

体内で大きな変革が生じている事を察知します。

 

4日目の胎仔は

「小指の爪の半分もない。心臓はケシ粒くらい」

という極小サイズ。

その中で起きている事を調べるために、

三木氏は時間ごとの標本を作りました。

 

その日いち日の間に生じていたのは、

「魚類のエラの血管が、みるみるうちに

両生類の肺の血管から、爬虫類の肺の血管に変身してゆく」

という、驚くべき変化でした。

 

「原始の肺静脈から浮き袋の静脈にいたるまでが、

ほとんどいっせいに現れ、しかも

次第次第に消えてゆくのです。」

※「 」内は原文引用。『海・呼吸・古代形象』p.93

 

 

 

▼発生過程は、折り紙に似ている。

 

生命の発生の過程では、

一旦形作られたものが、

あるものは変化を遂げつつ残り、

あるものは消え去っていく。

 

三木氏の記述からは、

そうした様子を窺い知ることが出来ます。

 

その過程を経て、

私たちが今ある姿が

ここに現れて来るわけです。

 

これは、

生命が「順番」を持って生まれて来ること、

 

そして順番を追わなくては、

今ある形態を個々の生命の中に

再現することが出来ないと言う事を、

示しているのではないでしょうか。

 

形の上では消滅したように見えても、

実はその過程を踏むことで、

目には見えない必要な機能や

つながりが獲得され、

 

今度はその機能やつながりを足掛かりとして、

形態は次へと展開して行くのだと思います。

 

こうした過程は、例えるなら、

折り紙に似ています。

 

先々の作業で

キレイな立体構造を作り出すために、

一旦折っては折り目をつけ、

それをまた広げ直す。

 

後々の工程で実際に使われるのは、

そうして跡付けした「線」だけです。

 

ですが、こうして「線」が活かされることで、

折ったという作業自体も、一つとして

無駄にはなっていないわけです。

 

 

 

▼つわりと、胎児が体験する「上陸劇」

 

個々の生命が系統発生を繰り返すことを

更に確認するべく、三木氏は

標本瓶の中にいる胎芽の顔を確認しました。

 

心臓にピッタリくっついている顔を見るために、

胎芽の首を切り落とすわけです(;・∀・)

 

その顔からは、

以下の様な類似性が観察されました。

 

胎生32日目頃 :古代ザメ「ラブカ」=軟骨魚類

胎生34日目  :ムカシトカゲ=爬虫類(上陸後の生物)

胎生38日目  :ミツユビナマケモノ=哺乳動物

 

これらの調査を踏まえて、

奥様が2人目の子供を妊娠した際に、

三木氏はつわりと胎児の関連に気付きます。

(以下、抜粋。「 」内は、原文引用。『海・呼吸・古代形象』p.95)

 

胎生30日を過ぎた頃から

奥様の「顔つきに茫洋とした雰囲気が漂って」来て、

 

「爬虫類の三十六日がやってきますと、

ついにつわりが始まったのです。

拒絶反応なんぞと言われますが、

そんなに単純なものではない。

あの古生代の終わりの一億年をかけた、

上陸の歴史で、まさに、母親の身体を舞台に、

激しく繰り展げられている。

母親はそれじっと抱え込んでいるのです。

そしてナマケモノの三十八日が来た時、

とうとうダウンしました。

黙って床を取って一日中横になっていました。

私はただ、唖然として、それを眺めていたのです。」

 

 

 

ネット上で調べてみると、

おおよそつわりのピークは

妊娠7週目に来るようです。

 

妊娠7週目は、

胎生期に換算すると5週目。

つわりのピークであると共に、

流産し易い時期でもあります。

(参照:http://www.pixy.cx/~kamosika/1/syusu.htm

 

三木氏が奥様を通して観察したことは、

母体全般に通底していることと考えられそうです。