身体は弱さを隠す。/顎関節の痛み①~顎関節の形の変化とその過程

開院してまもなくの頃から
来院して下さっているAさん。Aさんの症状は繰り返し
同じところに出る傾向が強いのですが、

その中でも変化の起きにくい手ごわい症状が、
顎関節の痛みと右のこめかみの上辺りに起きる偏頭痛でした。

ご自身も医療関係のお仕事をされており、
他者の心の動きに非常に繊細に反応される方です。
それでいて深刻さがなく、明るく朗らかで、
ほっとするような温かさのあるお人柄

 

そのお人柄にたがわず、身体の反応もとても早くて素直。
にもかかわらず、顎関節に関しては手こずりました。

施術を通して徐々に全身のバランスが修正され、
当初の、口を開ける時に顎関節に痛みが出て大きく口を開けられない、
という不具合を感じることは少なくなっては行きました。

ですが、これは「癒えた」のとは違います。
外側から顎関節に触れると、まだ内側から強く外に押し出されたかのように
出っ張った形をしています。左右両方とも。

 

この内側からの力が消えない限り、
顎関節が本当に楽になるわけではないな、そう感じました。

 

はっきりと違和感のある手触りなので、施術の度に気になる。
そう感じる所と言うことは、やはり正常な状態ではないのですね。

Aさんの施術は、ほぼ1か月に1度のペース。
10月にいらっしゃったとき、顎関節が大きく変わりました。
内側から関節を押し広げる力が、消えたのです。

原因は、首でした。
首の一番上、後頭骨と頸椎の1番をつなぐ関節部分が詰まっていたんですね。
少し、捻れも加わっていた様です。

早い段階でここに施術していたら、もっと早く改善したのでは?
そう思われる方もいると思います。

身体は、弱点を巧みに隠しています。
緊張を塗り重ねて念入りに固め、
そこには問題がないかの様に気配を隠します

そこが重要な所であればある程、
隠し方には念が入っています。

隠されたものに姿を現してもらう為には、
上塗りされた緊張をひたすら、根気よく丁寧に剥がして行きます。
そして、現れる時を注意深く見守ります。

 

後頭骨の下縁にある緊張を、
細かくこまかく丁寧に解いて行くと、

首の後ろ側の緊張がゆるみ・・・、
頸椎の並びが滑らかになり・・・、
だんだんと色々なところが変化して行きます。

さらに細かく、深く、ただ黙々と、
後頭骨の下縁の緊張を解いて行きます。

その果てに、やっと一番上の頸椎がゆるみ始め、
ここの骨がこんなに固まってたとは~!
と状況がはっきりと分かり始めた時に、

 

顎の関節の内側で、圧力が抜け始めました。

 

(施術は主に右手で刺激、左手で
身体全体に起きている反応をモニターしています。)

 

外に出っ張っていた左右の顎関節。
その内側で力がす~っと抜けて行き、出っ張りが平らになりました。

 

ご本人にも確認してもらうと、
「関節の所がスッキリ、滑らかになってる。
顔の皮膚も柔らか~い!良かった~」と。

 

こうした変化は、身体による自発的で能動的な反応。
そこには脳によるコントロールは介在しません。

 

細胞同士が、互いの間に生じる張力の変化を感じて、
当意即妙、自ら動き出します。

 

こうした動きを感じる時、
身体の中に隠された秩序、身体の知性に触れた…!と感じます。
施術の深い面白さを実感する幸せな瞬間です。

 

これは本当に楽しくて幸せで、
一人で味わうのはとっても勿体ない!
だから、こう思いながら施術します。

 

クライアントさんにも同じように体感してもらえたら。
そうしたらきっと、

身体の素晴らしさや神秘を実感してもらえる。
身体との信頼関係を深めてもらえるだろうなぁ!

 

 

 

 

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