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死の淵に立つ馬③ ~岳の生還

前回からの続き

 

岳に会いに来ていた人たちが、首元に集まって岳に触れる。
寂しい思いをさせずに、苦しませずに逝かせてあげたい。

 

荒い呼吸の鼻先に、
精油を塗った手のひらを差し出す。
少しでも、痛みの意識が緩和できれば。

 

獣医が、そろそろかなと
ゆっくりした足取りで車へ向かう。

 

生殺与奪の権利は、
いつだって行使するときには
迷いが生じるものなのだろう。

 

本当に、あそこで逝かせて良かったのだろうかと。

 

その判断に
唯一人で責任を負う存在だから、
あの背中は寡黙なのだろうか。

 

スタッフの腹を押す手は緩まない。
岳は白目を剥いたまま、次第に
全ての動きが収束していく。

 

しばらくの空白。
首元のまわりにいた者は、覚悟を決めた。
腹を押す場長たちは、手を止めない。

 

…獣医はまだだろうか?
…と、

 

ガバッ!!

 

岳が急に意識を取り戻した。
それと同時に、凄い勢いで起き上がった。

 

と言っても、後足が弱まり、
体重を支えられない。

 

頭を高く上げて
よろけながら踏んばる岳を、
場長が叱咤する。
立ち上がる気持ちが途切れないように。

 

木曽馬は、体重が300キロ以上ある。
横に倒れたままでは
自重で肺がダメになるらしい。

 

4時間が限度。それ以上は肺に水が溜まって来る。
そう、獣医が教えてくれる。

 

末梢循環も低下しやすい。
寝たままだと、 褥瘡も起きやすいと言う。

 

同じ重力下でも、
人間と馬の受けている引力の強さは
違うのかも知れない。ふと思う。

 

人間は立位だから、
重力の掛かる水平面の面積が狭い。
馬は、広い背中で重力を受け止める。

 

馬は、大地と共にあり、
大地の力の中で生きる生命なのだと
改めて思う。

 

かろうじて起き上った岳は、
四肢すべてがちゃんと地面についた途端、
急に足早に歩き出した。

 

しっかりした足取り。
今まで、じっとしていたのが
まるで冗談のよう。

 

腹痛に波があるのは、
誰しも経験のあることだろう。
岳は白目を剥き
気絶をするほどの激痛の波に襲われ、
そこから戻ってきた。

 

まわりの人間は、
この時、覚悟を決めた。
もう逝くのだろう、と。

 

墓穴を掘る者、
阿弥陀経を唱える者。
送る準備が整いつつあった。

 

それを振り切って起き上った岳は、
意外なほどにピンピンして見えた。

 

私たちは、 しばし呆気に取られた。

 

死の淵から、岳が戻った。
みんなの緊張の糸が切れた。
空気が変わりつつある。

 

「もうダメだと思った!
すっかり覚悟を決めたのに~」

 

笑いながら言うと、
一気に場に笑いが弾けた。

 

人間が諦めの気持ちのままでは、
踏んばる岳の足を引っ張るだけだ。
それは、避けたい。

 

「きっと、あっち(彼岸)にいる福ちゃんに
蹴り返されたんだよ!」
応える声があった。

 

みんな、楽な気持ちで
岳を見守る姿勢へと切り替わった。

 

死を迎えようとする深刻でかび臭い場が、
明るく風通しの良い空気へと一変した。

 

岳の疝痛の原因は
いまだに腹の中に納まっている。
でもこれで 、流れの先は変わったのかも知れない。

 

 

 

…続く

 

 

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死の淵に立つ馬② ~それぞれの立場で出来る事。

前回のあらすじ~
2日間の疝痛の果てに、
 腸の動きが止まった木曽馬の岳風。
 見守る人間たちの、
 それぞれの立場での努力が始まった。

 

 

自分の手だけでは、
弱った馬の肉体に変化を促すには 心もとなく感じた。

 

獣医に断わって、
精油や音叉も使いながら 腹部を刺激してみる。

 

動物は、音叉には敏感だという。
腹に刺激が入って腸が動くことで痛みが生じるのだろうか。
後ずさりをする。

 

出来るだけ痛みが生じないよう、
身体にどんな変化が起きているかは
つぶさに把握しておきたい。

 

やはり自分の手で、
細胞と岳の息遣いを感じながら手当をしよう。

 

人間と同じ構造なら、
横隔膜から伸びた内側脚が腰椎に付着しているはず。

 

横隔膜の端と端を押さえるように、
腰仙関節とみぞおちにアプローチする。

 

2か所に精油を塗布し、同時に触れる。
精油が、エネルギーの伝導を助けてくれるだろう。

 

横隔膜の広がりを意識で捉えながら、
反応が起こるのをじっと待つ。

 

横隔膜全体が、
意識に入ってくるようになった。
これは、ひとまず横隔膜全体に
エネルギーが通ったという目安。

 

獣医が、心拍と腸の動きを聴きに来る。

 

今まで動いていなかったところが
動いてきているかも知れない、と。

 

ただ、40メートルの腸。
外側で聴診出来る範囲は動いても、
その奥がどうなっているかは分からない。

 

肌寒い早春の夜、
「冷たい」と言いつつ片腕を水で浸した獣医は、

 

おもむろに直腸検査を始めた。
肩まで、肛門の中へと消えていく。
ちなみに、獣医は女医さんだ。

 

生き物を扱う人の潔さは、独特だ。
それは、 生き死にと
当たり前の様に背中合わせでいる事から来る、
厳しさと覚悟と、そして
その底に大きな優しさがあるからなのだろうと思う。

 

肩まで入るほど
奥深くに腕を挿し込むと、

 

「ガチガチだと思ってたけど、少し凹むな」

 

思っていたよりボロの固さは
柔らかかったようだ。
少し、望みが強くなる。

 

直腸検査からしばらく経って、
痛さをおくびにも出さず
静かに我慢し続けていた岳が

 

腰から崩れるように
ゆっくりと倒れた。

 

張りすぎた腹が邪魔をして、
上側の足は浮いたまま。
目が力なく閉じ始める。

 

眠ってはマズいと自分で分かっているかのように、
必死に瞼をしばたたいて 目を開けようとしている。

 

やがて痙攣のような動きが起き、
目がグルグルと彷徨う。

 

これはマズいな。
白目を剥き始めた…。

 

足を大きくバタバタ動かしている。
苦しい腹を蹴ろうとしている様だ。

 

それを察した場長とスタッフが、
腹を強くたたき始めた。

 

人間が相手なら、
苦しんでいる所を強く叩いたり押したりするのは、
あり得ない。

 

心臓マッサージだって、
相手の意識がない状態で行う。

 

可哀想という言葉は
誰からも出なかった。重要なのは、
タイミングを外さぬこと。

 

今この瞬間にやるべきことを、
やれることをやるだけ。

 

馬がしようとしている事の
意を汲んで、 それを実行に繋げる
反射神経があるかどうか。

 

行動の表面がどんな形かに囚われず、
その意図が馬の意思を支えるものなら、
迷っているヒマはない。

 

場長は、空を蹴る岳の脚を見て
何が必要かを瞬間的に嗅ぎ分け、
行動した様に見えた。

 

 

…続く

 

 

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精油と音叉の力。

 

エアコンの中の

黒い斑点(カビです^^;)が

ず~っと気になっていたのを、

 

 

今日になって

やっとキレイに掃除出来た! 😀

のは良かったんだけれど、

 

 

ゴリゴリゴリ…

「あ!やった!!」

 

 

掃除が終わる直前に

エアコンを付けまして、

最後の作業をしたんですね。

 

 

そうなんです、

案の定、

回転式のファンに

指を突っ込みました。

 

 

慌てて手を引き抜いて、

右手の中指が削れてないかを確認。

 

 

ほっ 😯

ちゃんと先っぽまで

無事にお肉がついてる~。

良かったぁ。

 

 

そして、中指さん、申し訳ない!

 

 

回転するファンにぶつかった指先は、

ジンジンする痛みと共に

膨れるような感覚がします。

 

 

このまま放っておくと、

患部はより痛みが強くなったり、

治りが遅くなったりします。

 

 

なぜかと言うと・・・

 

 

中指の様子を調べると、

関節が不安定になり、

皮膚や筋肉も妙に柔らかくヤワヤワ、

 

 

骨の表面でズルズルと動いて

骨格構造の安定性を支える力を

失っています。

 

 

これでは血管も

緊張度が足りなくなっているので、

患部を再建するための材料を

運んでくる血液が

患部に十分に届きにくくなるんですね 😕

 

 

患部では、細胞は言わば

パニックを起こしている状態です。

 

 

強い衝撃が加わることで、

自分たちの正常な振動数を

失っている状態と

理解してもらうと良いかと思います。

 

 

組織や器官には、それぞれ

独自の振動数があるのですね。

 

 

それは、私たち人間一人一人に、

独自のペースや

生活のリズムがあるのと同じことです。

 

 

 

 

音叉や精油は、ケガにどう作用するか。

 

 

せっかくなので、指を材料に実験。

通常、皆さんに行う施術の様に

筋膜からのアプローチでも患部の組織を

整えることは出来ますが、

ちょっと時間が必要。

 

 

なので、今回は

精油と音叉を使ってみました。

 

 

先日、思うところあって、

音叉と精油を用いる

ヒーリング手法を学びました。

 

 

レインドロップといって、

カナダの先住部族に伝わる治癒方法を

元にしているセラピーです。

 

 

精油も音叉も品質が確かなものは

一定の安定した周波数を生じます。

 

 

その力を借りると、

急なケガや打撲で

パニックになっている患部を、

効率的に落ち着かせることが

期待できます。

 

 

パニックが落ち着くと言うことは、

患部がそれ以上広がるのを

防ぐことにもなります。

 

 

まずは精油。

ヴァラ―というブレンドオイルを

左手に取り、痛めた右中指を包みます。

 

 

患部が落ち着いてきたからでしょう、

3分ほどの内に

腕~肩にかけての力が抜けました。

 

 

エアコンに巻き込まれた瞬間に

反射的に手を引っ込めた際に、

腕に力が入ったんですね。

 

それと、

驚いたせいで腰も力が抜けて

浮ついた感じでしたが、

それもふっと下に降りました。

 

 

腰が落ち着くと、

気持ちも落ち着きました。

 

 

指の状態を再度確認してみると、

関節はグラグラしていたのが止まり、

 

 

皮膚や筋肉組織も

ズルズル動いて遊ぶことはなくなり、

骨の表面で安定しています。

 

 

ここに、さらに

音叉を当ててみました。

 

 

音叉を3回、

患部の上で振動させます。

 

 

細かい振動が伝わると、

最初は痛みを感じます。

3回目にはそれが治まり、

指先の輪郭がはっきり

意識出来るようになって来ました。

 

 

処置の直後は、指先の皮膚感覚は

マヒしていましたが、

30分経って

軽い痛みと共に感覚も戻りました。

 

 

5時間経った今、

かれこれ2時間以上

PCに向かっていますが、

 

 

中指の痛みが気になって打てない・・・

なんてこともないです。

 

 

話は少し変わりますが・・・。

 

 

今の世界では、災害が増えて、

いつ何時ケガをする可能性や

ケガをしている人を

介助する可能性が

高くなっていると思います。

 

 

そんな場面に会わないに

越したことは無いけれど、

もし出会った場合には

自分に何が出来るのか 🙄

そんなことをよく考えます。

 

 

音叉も精油も軽く持ち運べるもの。

そして、誰でもかなり簡単に扱えます。

 

 

こうしたお助けアイテムがあったら、

いざという時に自分にも人にも

サポートの手を容易に

差し出すことが出来るんじゃないかな~。

なんてことを、

中指を見ながら考えています 🙂